プラモデル作りに励む週末

オフィスで作業する8時間の勤務時間以外も、どうやったらミレニアム・ファルコンが「リアル」に見えるようになるかをひたすら考える。この時はまだ家族と別れたままの単身暮らしだったので、週末にはミレニアム・ファルコンやスター・デストロイヤーといった『スター・ウォーズ』のプラモデルを作り始めた。手を動かすことでアイデアを得ようとする試みである。

成田昌隆『ミレニアム・ファルコンを作った男』(光文社)
成田昌隆『ミレニアム・ファルコンを作った男』(光文社)

ミレニアム・ファルコンのプラモデルは、ファインモールド社の72分の1スケールを組上げ、丁寧に塗装して汚しを入れる。スター・デストロイヤーは、オークションサイトでレジンキットを買い、2000本の光ファイバーを仕掛けてLEDで照明が点くようにした。ついでに、自分の担当ではないXウイングまで作ってしまった。実はこの私が作ったXウイングの模型、出来が良かったので映画にそのままミニチュアとして登場させる話もあったのだが、結局CGが使われた。残念!

CGモデルのミレニアム・ファルコン制作でも、プラモデルの経験は大いに役立った。

例えば、オリジナル模型の後部側面には、丸が2つ付いた部品が4つ並んでいる。これはタミヤのマチルダ戦車のサスペンションを流用したものだ。こういう装飾はそれらしく見えればいいものだから、模型の制作者もきちんと考えて作り込んだとは限らない。

けれど、その意味や機能を自分なりに考える。リアルに見える造形というのは、そこに何らかの機能性が感じられるということだ。ただゴテゴテしているのではなく、燃料を輸送するためにパイプが走っていたり、熱を逃がすために穴が空いていたりする。そういう構造を見た時、人は「リアルだ」と感じるものなのだ。

細部にこだわったファルコンのモデルが完成

では、丸が2つ付いた4つの部品は何なのだろう。

これは、プロトン魚雷の発射口にすると面白そうだ。子供の頃に遊んだ魚雷戦ゲームに出てきた砲台のイメージか。このようにして、オリジナル模型の部品に意味付けし、プラモデルのパーツを一つひとつ作るように、マヤを使って部品をモデリングしていく。

我々のCG制作と並行して、プロダクションでは実物大ミレニアム・ファルコンのセットも作られていた。こちらは全面的に新たな部品が使われていて、パイプが船体を縦横無尽に走っている。セットとCGで見た目があまりにも異なっているとまずいので、セットと同じようなパイプをCGモデルにも走らせ、目立つ大型部品も取り込む。2カ月ほどかけて、私は円盤側面や上部と下部に空いている四角い大きな穴のディテール、上下に付いている機関砲の砲撃室内部、乗降口とその内部、着陸用の脚などをモデリングした。その後、仲間のモデラーに引き継ぎ、これまでで最も緻密なミレニアム・ファルコンのモデルが完成した。

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