主張の抜け漏れを発見した後の返答次第で論破にも対話にもなりうる

驚かれるかもしれませんが、論破的思考と対話的思考は、真っ向から対立する2つの思考パターンではありません。実はこの2つの思考は、75%くらいまでは同じ思考プロセスをたどるのです。

「相手を論破する方法」について考えてみましょう。論破をする際に必要なのは、相手の主張の「抜け漏れ」(根拠の脆弱性や論理の飛躍)をチェックすることです。話を聞いたときに、「なぜそう言えるんですか?」と指摘できるようなポイントを見つけることが、論破のための大前提となります。そして対話的思考においても、相手の主張の「抜け漏れ」をチェックすることは非常に重要です。なぜなら「対話」とは、何よりも相手の言わんとすることをしっかりと理解するところから始まるからです。ここにおいて、2つの思考は共に「ロジカル・シンキング」を実践しています。

2つの思考パターンが決定的に異なるのは、相手の主張の抜け漏れをチェックした後です。その穴を相手への否定文で広げようとするのが論破的思考であり、その穴を相手に疑問文を投げかけることで埋めようとするのが対話的思考です。

論破の場合、「○○の点が抜け落ちているので、あなたの主張は間違っています」という攻撃を行いますが、対話であれば、「例えば○○の点から考えてみるとどうでしょう?」と補足的な問いかけを行います。その結果、前者の場合は相手の主張と面子を潰して終わってしまいますが、後者の場合は、「確かにそう考えてみるといいかもしれない」と相手に「気づき」を促し、共に次のステップへと議論を進めることができるのです。

このように、論破的思考と対話的思考は共にロジカル・シンキングを行使する点で変わりはありません。両者の決定的な違いは、主張の抜け漏れを発見した後の返答の仕方なのです。