不動産、名画、ゴルフ会員権、値段はぐんぐんアップ
一度投機に味を占めると、二匹目のドジョウを狙いたくなるのが人間の性。株式投資に少し遅れて、ブーム化したのが「不動産投資」です。国土面積の狭い日本には昔から「土地神話」(地価は絶対下がらない)がありましたから、カネ余りの当時、不動産も投機に向いた商品として目をつけられたわけです。人々は低金利で銀行融資を受け、土地やマンションを買いあさりました。その結果、不動産価格もどんどん高騰し、1990年には日本の地価総額は2470兆円にまで高騰しました。この額は、なんと「アメリカ3個分」にあたる金額でした。特に都心部の地価高騰はすさまじく、ピーク時には東京23区の地価総額だけで「アメリカ1個分」にもなったそうです。
その後人々は、土地や株以外にも金目のモノを次々と買いあさり、その結果、世界的名画やゴルフ会員権、ブランド品などがぐんぐん値を上げていきました。なお、この当時、私たちは自分が置かれている状況を「バブル」とは思っていませんでした。そんなマクロな視点ではなく、もっとミクロな「私の財テク」という意識しかなかったのです。その集積がバブル経済を形成し、私たちは「日本は世界一の経済大国になった」「ジャパンマネーは世界最強」などと浮かれていたのです。
しかし、このバブルも、やがて終わりを迎えます。1989年、日銀は公定歩合を2.5%から6%まで引き上げました。これで金利が2倍以上になり、人々は簡単に大金を借りられなくなりました。つまりカネ余りは、これにて終了。そして翌1990年、政府は「不動産融資総量規制」を発表しました。これは大蔵省から銀行に出された行政指導で、銀行が不動産取引でお金を貸す場合、貸出額に上限を設定するという内容でした。つまり、このルールによって、銀行は高額の不動産取引にお金を貸すことができなくなったのです。
こういった一連の引き締め政策で人々の「値上がり期待感」はしぼみ、土地や株の売り注文が殺到した結果、地価・株価は暴落。バブルはあえなく崩壊してしまったのです。
バブル後の地価・株価は、ひどいものでした。まず株価のほうが敏感に反応し、翌年1990年には、日経平均株価が2万円を割り込みました。わずか1年で、ピーク時から半値近く下がったことになります。地価も値を下げ続け、2006年末には1228兆円と、こちらもピーク時の半分ぐらいに下がりました。この間、企業の倒産は増え、個人のリストラは進み、銀行が不良債権に苦しんだのは、皆さんもご存じのとおりです。
2021年現在、世界は「コロナ緩和マネー」があふれ、日本も不況であるにもかかわらず株価や地価が上昇するというバブルの様相を呈しています。そこにのっかる、のっからないは個人の自由ですが、「自分も投資を」と思っている人は、過去の教訓を胸に刻み、くれぐれも「降りどき」を間違えないよう気をつけましょう。