「東京五輪が終われば首都圏マンション価格は下がる」という噂がある。本当なのか。スタイルアクト代表の沖有人さんは「全く根拠がない話だ。不動産価格に影響を与えているのは日銀の金融緩和だからだ」という――。
国立競技場周辺より都心(東京都新宿区=2020年3月25日)
写真=時事通信フォト
国立競技場周辺より都心(東京都新宿区=2020年3月25日)

嫌気が差すほど質問されてきた

ちなみに、私はこのタイトルのようなことは一切言ったことがない。しかしながら、これまで何度も尋ねられている。嫌気が差すほどの回数だったために、自社の会員制サイトの動画レクチャーで「2度とこの質問はしないでくれ」という解説動画まで出した。オリンピック開催年を迎え、この結果も明らかになりつつある中、真実はどこにあるのかを明らかにしよう。

デマ・都市伝説・陰謀論など、まことしやかな話を信じる人は多い。それを信じる人の多くが口をそろえることは、「みんながそう言っているから」というものだ。そうした論調は大手メディアが情報を作為的に出すことから作り上げられるケースが多い。そこで最も重要な役割を果たすのは、「見出し」だ。多くの人は見出ししか読まない。オンラインニュース、新聞、雑誌、テレビ、動画だろうが、タイトル・見出し・サムネイルは最も編集に力が入るところで、記事を読むと見出しと全く違う話になっていることも多い。

また、その道の権威ある者の見解として、もっともらしく話を展開していく。結論をぼやかすために、賛否の両論を併記するテクニックもある。それでも、見出ししか読まない人には、本来あやふやな結論が事実であるかのように認識されることになる。

不動産が大きく下がったタイミングは戦後2回

そもそもこのタイトルの話は全く根拠がない。しかし、もっともらしく感じるので、メディアの見出しを賑やかに飾る。予想は何を言っても「当たるも八卦当たらぬも八卦」という扱いである。ちなみに、私は人口予測・着工戸数予測・需給バランス予測・価格予測などを25年の間仕事にしているので、予測が外れるようだと仕事がなくなるリスクを常に抱えている。

これまで不動産が大きく下げたタイミングは戦後2回しかない。1つはバブル崩壊であり、もう1つはリーマンショックである。どちらも起きた原因は、不動産に資金が流れなくなったことだ。バブル崩壊は総量規制によって起こった。総量規制は、1990年に当時の大蔵省から金融機関に対して行われた行政指導で、土地取引に流れる融資を抑えるために始まった。急騰する不動産価格の上昇は止まり、貸し渋り・貸し剥しを大規模に実施したために、それまで融資していた不動産の担保価値が下がり、多くの不良債権を生み出すことになる。不動産価格の下落はその後10年以上続いた。