2025年までは値上がりする確率が最も高い

本来のオリンピック開催時期の2020年を過ぎたのだから価格はもう下がり始めてもいいが、予想に反して不動産価格は高騰している。コロナ禍で家に対する需要は変わった。「もう1部屋欲しい」という世帯が増え、マンションも戸建ても供給戸数を買いたい世帯数が上回る事態になっている。こうなると、車のように同じものを大量生産することができない、その立地固有の不動産は価格が上がり始める。

それならば、需給バランスが崩れたら価格が下がるかというとそれはあまり起こらない。マンションの供給戸数が多い企業は大企業で、財務力があるので売り急ぐ必要性がない。戸建ては売れ残ると値引きが始まるが、それも原価割れするほど下がることはない。「下がりにくく、上がりやすい」というのが需給バランスでの不動産価格変動の特徴である。

上昇価格矢印付き住宅ローンのグラフ
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それ以上に不動産価格に影響を与えているのは、金融緩和を異次元で実施している日本銀行に他ならない。アベノミクスの実行のために首相が任命した黒田東彦日銀総裁の任期は当初2018年までだった。この金融緩和はインフレ率2%に達するまで行うと公言されているが、2%にほど遠い状況が続いている。そして、黒田日銀総裁は再任されたことで、金融緩和も2023年まで行うことが決まった。インフレ率2%が達しないならば、2023年まで土地購入資金は潤沢に流れ続け、その2年後までの建設期間を経て、2025年まで価格は値上がりする確率が最も高くなっている。

大したことのないマンションが1億円する時代になった

こんな先読みしやすい事態を8年も続けたので、首都圏のマンションは6割増し、地方のマンションは2倍以上の価格に高騰した。庶民の年収は変わらない中で、大したことのないマンションが1億円する時代になった。単純に言って価格は高いと思う。

しかし、これは国・政治家・日銀・官僚(特に財務省)にとっては想定の範囲内で、あえて資産インフレという副作用を放置してきた節がある。その理由は、少子高齢化だからだ。高齢者は稼げないが、不動産や株などの資産だけはたくさん持っており、近いうちに相続税で回収することができる。その資産をインフレさせれば、国の膨れ上がった借金は返す目途が立つ。デフレが問題なのは、デフレによって国の借金は重たくなるだけだからだ。しかし、その反動で、現役世代の持てる者と持たざる者の格差は、この8年間で3000万円程度生まれている。