英語学習の成果は……“読解1点”

しかし、留学生活も半年が過ぎ、振り分けられた一番下のクラスの留学生相手なら苦労なく会話ができるようになっていた。

メキシコでの海底調査の様子
写真=Alfredo Martinez Fernandez
メキシコでの海底調査の様子

自分の英語力を試してやろうと、私はTOEFLを受けることにした。半年前まではチンプンカンプンだった英語も何となく理解できるようになり、英語力が相当伸びている自信があったのだ。

TOEFLは読解、聞き取り、作文、会話と4つの分野にわかれている。それぞれが30点満点で、合計120点満点だ。成績が届き、スコアを確認してみると……。

読解:1点

目を疑った。TOEFLは全て選択問題だ。適当に答えても各セクションで5点は取れそうなものなのに、1点とは……。他の分野のスコアも散々で、合計でも30点かそこらだった。このままだと、いつまでたっても大学院入学など果たせない。徐々に近づいていたと思っていた水中考古学ははるか先にあった。

次の日から、語学学校での授業後、深夜3時まで図書館で勉強する毎日が始まった。今思えばこの時が人生で初めての“受験勉強”だった。

待望の船舶考古学授業、そして絶望……

そんなこんなで2008年、なんとかTOEFLと、大学院を目指すアメリカ人も受ける共通試験であるGREの最低限の成績をクリアし、大学院にNon-Degree Seekingという制度で仮入学することができた。大学院の授業1つと、大学4年生のクラス2つの全てでB(80点)以上の成績を1年間で残せば、正式な入学が許される。逆に成績が達しなかったら入学をあきらめ、帰国しなければならないというものだった。

メキシコでの海底調査の様子
写真=Alfredo Martinez Fernandez
メキシコでの海底調査の様子

何にせよ、あのテキサスA&M大学の船舶考古学プログラムで勉強をすることができる! 私は天にも昇る気分だった。このためにテキサスまでやってきて、毎日英語を勉強したのだ!

受講することになったのは、古代から中世中期までのヨーロッパの造船の歴史を学ぶ「船舶考古学概論」のクラスだった。私以外の学生は10人、全員がアメリカ人だ。

教授が教室に入ってきて、75分間の授業が始まった。最初の数分で、私の希望は絶望に変わった。

教授が発する単語が、何1つ理解できない。

理解率0%である。血の気がスーーーーーッと引いていった。

しっかりと考えれば分かるが、私はたった2年間英語を勉強しただけだったのである(中学校から大学まで何をしていたのかは聞かないでほしい)。日常生活の英語はそれなりにこなせるようになり、ある程度テレビ番組などの内容も頭に入るようになっていた。

ただ現実にはテキサスA&M大学の大学院の船舶考古学プログラムは、世界屈指の専門的な内容だ。高度な用語がバンバン飛び交うが、もちろん外国人の私のためにゆっくりと話してくれるわけでも、参考用の資料が配られるわけでもなかった。

私はパニック状態となった。

「どうしよう! どうしよう! どうしよう! どうしよう!」

理解できるのは、映し出されている写真や図だけだった。