国軍トップは「2023年8月までに総選挙を準備」と演説
最高司令官のミン・アウン・フライン氏は8月1日、国営テレビを通じて演説し、市民の抵抗を「テロ行為」と決め付け、「総選挙を必ず実施する。2023年8月までに準備を終える」と語った。
ミャンマー国軍はクーデターで非常事態宣言を発令したが、この非常事態宣言を2年間続けた後、半年以内に選挙を行う計画のようだ。選管は前述したように国軍によって牛耳られ、国軍の意を受けた政党のメンバーが当選し、国軍の傀儡政権が生まれる。国軍は「選挙の結果だ」と主張すれば国際社会も手が出せないと考えているのだろうが、そんな思惑は許されない。
振り返ると、7月26日、選管は昨年11月の総選挙での不正が認定されたとでっち上げ、「選挙の結果を無効にする」と発表した。NLDの不正を解明するためにクーデターを起こしたと主張する国軍に錦の旗(正当性)を与えたことになる。国軍は今後、選管にNLDの解党手続きを進めさせ、アウン・サン・スー・チー氏らNLD幹部を裁判で有罪にして次期総選挙への立候補を妨害するとみられる。
ミン・アウン・フライン氏はミャンマー国軍の最高司令官のポストを今年限りで退く予定だったが、クーデター後に定年制を撤廃し、居座っている。許されない行為である。
そう言えば、中国の習近平・国家主席(党総書記)も定年制を廃することで権力を維持し続けようとしている。独裁者はどこの国も同じだ。世に恐ろしきは独裁者である。
「民政移管」はまやかしの恐怖政治である
8月3日付の朝日新聞の社説は「力ずくで権力を握ったものが政府を名乗る。本来の選挙で勝った政党は解体させて、やり直し選挙をする。そんな『民政移管』は、まやかしだ」と書き出したうえで、「国軍はかねて自らの正当性を主張しており、民主体制への移行を示すことで国際社会の非難を和らげたい思惑のようだ」と指摘し、こう訴える。
「だがそんな行程を国軍が決めること自体、理不尽だ。昨年11月の総選挙が示した民意を踏みにじった事実は動かない」
ミャンマー国軍による独裁体制は、恐怖政治以外の何ものでもない。このままでは周辺のアジアの国々にも影響が及ぶ。国連の安全保障理事会は中国とロシアの反対を封じ込め、ミャンマー国軍に強い態度を示すべきである。
朝日社説は「国家顧問として民主政府のトップを務めていたスーチー氏らは拘束され、裁判にかけられている。次の選挙で国軍の息のかかった政党を勝たせる筋書きであることは明らかだ」とも指摘するが、国連など国際社会は形だけの偽りの選挙を認めてはならない。
朝日社説は「民主化にかじを切ったこの10年でミャンマーには外国の投資が流れ込み、高い成長率を遂げていた。その成果を壊し、国民を失望の淵に追いやった国軍に、国家運営を語る資格はないことを自覚すべきだ」とも指摘し、最後にこう訴える。
「日本政府は、市民生活への影響も配慮しつつ、ODAの全面停止など制裁の強化を模索するべきだ。進出する民間企業も、事業が国軍の収益源になっていないか、精査が求められる」
確かに経済制裁は大きな効果がある。北朝鮮が経済制裁で身動きが取れなくなり、アメリカとの直接交渉に活路を見い出そうとしているのを考えればよく分かるだろう。
日本政府はミャンマーと旧ビルマ時代から深い関係がある。その関係は現在も変わらないし、国軍にも影響力を持つ。日本政府はこれまでに養ったパイプを生かし、ミャンマーを正当な道へと導くべきである。それができれば、国際社会の中での日本の地位は必ず上がる。