社長が毎日ラーメンと餃子を試食する理由

2019年の川越本社工場完成時には、新たに圧力釜を採用。スープを加熱する時間が約3分の1に短縮され、スープに濃厚さが増したうえに2倍の量が取れて、コストを削減できた。味のブレも消えて、ラーメンの注文はさらに増えている。

2019年に完成した川越本社工場
写真=筆者撮影
2019年に完成した川越本社工場

ちなみにラーメンの生麺も、餃子と同様に手作りと同じ加水率約50%を実現し、加水率30〜43%の店が多い競合店に差をつけた。

それらは池野谷社長自身が最終チェックする。お店で提供するものと同じ餃子やラーメンのハーフサイズを毎日試食し、気になったところは即改善する。

たとえば季節ごとに野菜の水分量が変わるから、対応して調理しなければ水分や塩分の量がブレる。その兆しを自らキャッチし、現場に指示するのだ。

「本社社員は約20人だけ」親子2代でシステム化

お店をバックアップする本社の社員は数年前まで13人しかおらず、いまでも川越本社の社員はわずか約20人。徹底した自動化で、管理部門・営業部門・品質管理部門を少人数で行なう。

従業員の出勤時にもタイムカードの代わりに静脈認証を導入し、紙の給与明細も廃止してスマホでチェックできる。

多店舗展開が成功した秘訣もシステム化だ。

店舗が8軒程度の規模のときに、POSレジをいち早く採り入れる。自動発注も1995年ごろから導入し、商品の廃棄ロス率を約8%から0.3%未満まで減らした。

このような徹底した効率化が、創業者の金子梅吉氏、娘の池野谷社長の親子2代にわたる経営において貫徹されてきた。

池野谷社長は1986年に入社し、食品商社勤務の経験を生かして、当時手書きだった帳簿作成をやめ、PCでの在庫管理・経営管理システムを構築する。さらにレシピの材料をグラム単位でマニュアル化し、経営のシステム化を推進。当時社長の父・金子氏にもPCスキルを伝授した。金子氏は、娘をこう評す。

「商売の細かいところにまできちんと目配りできるし、会社を引き継いで、私と同じ視点でやってくれるのはやっぱり娘だなって。仕事をするのに性別は関係ありません」

ぎょうざの満洲では多くの効率化により、飲食産業には珍しい社員の1日8時間勤務と、週休2日を実現した。従業員の健康な生活があってはじめて、いいサービスをお客さんに届けられるからだ。