「修羅場経験」が価値となる
確かにこれまで日本の組織には、リスクを取らず、なるべく失敗しないように安全な道を歩んだ人が出世しやすい構造がありました。
しかし非連続な時代に突入してからは、むしろ王道を外れて修羅場を経験した人が経営トップに抜擢されるケースが増えています。
日立製作所の川村隆元会長や良品計画の松井忠三元会長がその代表的な例でしょう。いずれも低迷していた業績をV字回復に導いた名経営者として知られますが、二人とも子会社への出向を経験するなど、社内の本流を外れたキャリアを辿ってきました。
彼らは会社が危機的状況に陥ったタイミングで、いきなり経営トップに抜擢され、見事に改革を成し遂げました。本流を外れたことで味わってきた様々な「修羅場」の経験が活かされたのだと思います。修羅場を経験していないエリート出世組では、こうはいかなかったでしょう。
失われた20年を経て、日本の組織も従来のやり方では前へ進めないことに気づき始めています。リーダーの育成や登用についても同様で、将来の経営者候補となる管理職にあえて困難な事業やプロジェクトを経験させ、危機的状況に強い人材に育てようとする企業が増えています。
「出世するためには波風を立ててはいけない」時代はとっくに終わろうとしているのです。