「提案」があれば次に選ぶべき行動を判断できる

2020年に世界を襲ったコロナ禍において、「感染防止策か、経済対策か」の議論が沸騰しましたが、感染防止を優先して緊急事態宣言を出せば、「飲食店や旅行産業が潰れるじゃないか」と言われ、経済対策を優先して緊急事態宣言を出さずにいると「これ以上、感染者が増えたらどうするんだ」と言われる。どちらを選択しても、反対意見が出ることは避けられません。

ただし多くの人は、Aと言われれば「Bがいい」、Bと言われれば「Aがいい」と脊髄反射的に批判しているだけで、「自分ならこうする」と提案を持っている人はごく少数です。

提案がなければ、批判は批判のまま終わってしまい、現実の課題解決には結びつきません。だからこそリーダーは、どんな課題に対しても、提案を持っていることが求められます。

提案があれば、次にどう行動すべきかも判断できます。

「社長のやり方は、自分が考える『会社のあるべき姿』とは違う」と判断したなら、しかるべき相手に提案をぶつければいいでしょう。

取締役会にかけてもいいし、社長と1対1の勝負をしてもいいし、管理職たちが直訴しようとしているオーナー会長に持っていってもいい。どれが最も効果的かは、その会社の仕組みや意思決定プロセスによりますが、いずれにしても提案があることが大前提です。

自分の提案をぶつけ、堂々とケンカせよ

一方、「自分が社長でも同じやり方をする」と判断したなら、管理職グループに自分の提案をぶつけるべきです。

管理職たちも提案を持っているなら、建設的な議論に発展するかもしれませんが、おそらくこの直訴計画は、ただただ「社長が気に入らない」という単なる感情論に基づく可能性が高いと推察されます。

そこで自分一人が「このクーデターは、本当に会社の事業継続性や長期的な成長につながるのか」という本質論を突きつければ、相手の反感を買い、直訴メンバーを敵に回すことになるかもしれません。

それでも信念を持って、堂々とケンカできるか。ここがリーダーとしての勝負どころです。

ボクシンググローブをはめたビジネスパーソン
写真=iStock.com/bee32
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かつての日本企業はメンバーシップ型雇用が主流で、終身雇用・年功序列を約束される代わりに、会社への忠誠心を求められました。しかし今後は、グローバル競争力を高めるため、欧米と同じようにジョブ型雇用への転換を進めざるを得ないでしょう。

ジョブ型の組織では、忠誠心の対象は会社ではなく、あくまで「事業の継続性や成長性」です。一人ひとりが「どうすれば事業を持続的に発展させられるか」を純粋に考えることができれば、本当に強い組織へと変わっていくはずです。