2020年、女性の過半数が50歳以上に

少子化が深刻化してきたときにコロナ禍に襲われたことを「最悪の巡り合わせ」と先述したが、最悪である理由はもう1つある。2020年は実際に、女性人口の過半数が50歳以上となったのである。

総務省によれば、2020年10月1日現在の50歳以上の女性人口は概算で3249万人となり、49歳以下人口の3212万人と逆転した。これのどこが問題なのかと疑問に思われる人もいるだろうが、それは日本人がいよいよ本格的に“絶滅への道”を歩み始めたということに他ならない。多くの女性は40代で出産を終えるからだ。合計特殊出生率が、母親になり得る年齢を15~49歳として計算されているのもこのためだ。

日本の少子化は、「過去の少子化」の影響で女児の出生数が減り続けてきたという構造的問題として起こっている。女児は十数年後には出産可能な年齢となるが、女性人口の過半数が50歳以上となったのも、女性の超長寿化と同時に女児の数が極端に減ってきたことが要因だ。ニワトリと卵のような関係であり、50歳以上の割合はどんどん拡大していく。

多くの国民が新型コロナウイルスの感染拡大に目を奪われているうちに、日本は致命的な局面を迎えていたのである。

少子化はいったん加速しはじめると、そのスピードを緩めることは難しい。“ため込んでいた需要”が一気に放出されるようにはならないと先に述べたが、日本のような晩産・晩婚社会ではなおさらだ。年を重ねてからの1年や2年の違いは大きい。結婚や出産のタイミングが1年遅くなるだけで、「子供は1人でよい」とか「3人目は諦めよう」となる。

コロナ禍で露見した“日本社会の老化”

このように少子化が加速することの影響は将来に向けて果てしなく広がっていく。私が先に、現時点での傷はまだ浅いが、何年か後に「国家の致命傷」として多くの人が気づき、そうなってからでは手遅れだ、と述べたことの意味をご理解いただけただろうか。

さらにもう1つ、気がかりな点がある。婚姻件数の減少という“現時点での浅き傷”は、「社会の老化」に密接につながっていることだ。

出生数が減るスピードが速いほど高齢化率の上昇ペースも速くなり、社会としての若さを急速に失う。われわれは「社会の老化」の真の怖さをもっと知っておく必要がある。

犬を連れて散歩する日本人シニアカップル
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得体の知れぬ感染症に身構えるのは自然のことだが、その正体が徐々に明らかになってもなお、必要以上に警戒したために、日本は活力を一気に失った。それは、結果的に将来に対して大きな禍根を残す。

個々人と同じで、「若さ」を失った社会は新たなストレスや変化に弱いものだが、コロナ禍における日本社会の姿は“社会パニック”に近く、国家が年老いたことを感じるに十分であった。欧米各国に比べて圧倒的に感染者数が少ないのに、上を下への大騒ぎとなり、政府の対策は後手に回った。