最先端の科学では人間の脳=こころの謎が次々明らかになってきている。著書『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)でその全貌を紹介した作家の橘玲氏は「貧困家庭に育った若者が高い自己コントロール力を使って成功したとしても、さまざまな病気を発症し老化が早まるという研究がある」という──。

※本稿は、橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

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「どうすればダイエットできるか」必要な3つのルール

現代社会においてもっとも意志力を問われるのがダイエットであることは間違いない。行動遺伝学は、体重は身長と同じく(あるいはより以上に)遺伝の影響を強く受けることを明らかにした。背の高い親の子どもが高身長になるのと同じように、親が太っていれば子どもも同じように太る可能性が高いのだ。

橘玲『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎)
橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)

一般に、遺伝率の高い形質を個人の努力で変えるのはきわめて難しい。遺伝的に足の遅い子どもは、どんなに努力してもウサイン・ボルトにはなれない。同様に遺伝的に太る体質のひとは、どれほど努力してもモデル体型にはなれないのかもしれない。

ただし体重管理には、身長などの身体的特徴はもちろん、運動神経や音楽的才能、知能などとも大きく異なる要素がある。当たり前の話だが、食べなければ誰でもやせるのだ。これが、ダイエットが現代において意志力を測る指標にされる理由だろう。

しかし現実には、いくら食べても太らないひともいれば、すぐに太ってなかなかやせないひともいる。生得的な要素を無視して、一律に「太っているから意志が弱い」と決めつけるのはあまりにも理不尽だ。あなたがダイエットに失敗してばかりいるとすれば、それはおそらく、遺伝的にダイエットに向いていないからだろう。

ここまでを前置きにして、「どうすればダイエットできるか」を考えてみよう。バウマイスターは、ダイエットに必要なのは次の3つのルールだという。

① ダイエットしない
② チョコレートを断つという誓いは立てない。他の食品についても同様
③ 自分を評価するときも、他人を評価するときも、肥満と意志力の弱さを一緒にしない