ダイエットに成功するにはダイエットしないこと
実験用ラットにコントロール食でダイエットさせると、最初のダイエットでは体重が減るが、ダイエットをやめて自由に食べさせると徐々に太りはじめ、もういちどダイエットすると同じ体重まで減らすのに前回より時間がかかる。
そしてまたやめると、前回よりも早く体重が増える。このサイクルを3回か4回繰り返すと、たとえ摂取カロリーを少なくしても増えた体重が減らなくなる。
これはヒトを含むすべての生き物が、進化の過程のなかで飢餓を乗り越えるために、体重を一定に維持しようとする仕組み(恒常性=ホメオスタシス)をそなえるようになったからだ。
ダイエットすると身体は飢餓の危険を察知し、できるだけ脂肪細胞を手放すまいとする。このリバウンド効果によって、ダイエットを試みれば試みるほど太っていく、という残念なことになる。
この罠にはまらないもっとも効果的な方法は「ダイエットしない」こと、すなわち身体に飢餓状態のサインを送らないことだ。短期のダイエットで急激に体重を落とそうとするのは、モデルや俳優などプロポーションの維持に職業人生を懸けているならともかく、最悪の方法だ。
ダイエットは長期の計画で現実的な目標を立て、スピリチュアルが飢餓に気づかないようこっそり行なわなければならない。
「どか食い」してしまう理由
ダイエットしているひとは、頭のなかで1日に摂取する上限のカロリーを決めていて、なんらかの理由でそれを超えてしまうと(心理学の実験に参加して大量のミルクシェイクを飲まされたとか)、その日のダイエットは失敗と見なして「もう取り返しはつかないのだから、今日は楽しんだ方がいい」と考える。
これは専門用語で「逆調節的摂食」と呼ばれるが、「もうどうでもいい!」効果といった方がわかりやすいだろう。
すべての生き物は、空腹になると「食べなさい」というサインが出されるようにできている。
それでも食べないと徐々に飢餓感が高まり、最後は「このままだと死んでしまう!」というアラートが鳴り響くようになる。
ダイエットというのは、この「食べなさい」というシグナルを意志力によって無視することだ。だがこうした努力を続けていると、「もう食べなくてもいい」という満腹のサインもいっしょにわからなくなる。その結果、一線を越えると歯止めがかからなくなり「どか食い」してしまう。
ダイエットは意志力で食欲を抑えつけるので自我消耗の状態になる。ここで自己コントロール力を回復させようとすると、脳にエネルギーを供給するグルコース(ブドウ糖)を摂取しなければならない。「食べないようにするためには食べなくてはならない」という皮肉な事態だ。