銅像撤去が強まれば、銅像保護も顕在化する

この現象のために、政党支持でいえば保守層はますます共和党支持になり、リベラル層は民主党支持で一枚岩的に結束していく状況を生み出している。左右の力で大きく二層に対称的に分かれた均衡状態に至っているといえる。

「トランプ政権がアメリカを分断した」という言説は日本にもアメリカにもあるが、分断はここ40年間で徐々に進み、オバマ、トランプ両政権で一気に加速化し、均衡状態になっている感がある。バイデン政権が発足して半年となるが、均衡状態となった分断はそんなに簡単に修正できるものではない。

均衡状態を保っているため、様々な議論が政治的に大きな争点となってしまい、顕在化する。リー将軍の銅像撤去のような奴隷制の遺産の見直しを強く望むリベラル派の動きが強くなるのに対して、その反作用である「銅像を守ろう」という動きも顕在化する。リー将軍の銅像撤去は「ますます目立つ」結果になっている。

「アカデミズムはこんなにリベラルに偏っている」

過去の歴史に対してリベラル派が見直しをしていくことに対して、リベラル批判のための保守派のはやり言葉が2つある。

一つ目は「キャンセルカルチャー」という言葉だ。その文字通り、過去の文化という遺産を「キャンセル」し、否定するという意味だ。ちょうど今回のリー将軍像の撤去がそれにあたる。

もう一つ、保守派がはやり言葉にしつつあるのが「批判的人種理論(Critical Race Theory)」という大学などでの研究のアプローチだ。「批判的人種理論」とは、様々な格差や差別の根底には人種問題があるという研究の見方であり、過去30年以上ずっと存在してきた。奴隷制はアメリカの国家の「原罪」であるという見方だ。

そのアプローチが分極化の中、保守派の分かりやすいターゲットになっているのが最近の傾向である。保守層に対して「アカデミズムはこんなにリベラルに偏っている」と批判している。

この言葉が保守派の中で定着しつつあることにしろ、像撤去にしろ、保守とリベラルが激しい対立をしながら、様々なことが「政治化」してしまう現状の結果である。

その不健全さは、分極化が収まるまで当面続くとすると、何ともやりきれない。

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