起業して経営者になるには、どれぐらいの資金が必要なのか。経営コンサルタントのえらいてんちょう氏は「『100万円以上が必要だ』と考えて、手を広げすぎると失敗する。生きていくには、“しょぼい起業”でも問題ない」という――。

※本稿は、えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

お金
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融資は低利息でも避け、出資プランも慎重に考えるべき

「総額1億円の第三者割当増資を実施!」などと、資金調達したベンチャー企業が発表し、その金額が将来性を計るモノサシとされている現代においても、しょぼい起業では、あえて古きよき概念を大切にしたいと思います。

しょぼい起業において「借金は悪」です。そっくりもらえて返さなくてよい給付金は別として、融資(=借金)は低利息であっても避けましょう。同様に、出資を受ける(=スポンサーを見つける)プランも慎重に考えるべきです。

しょぼい起業における資本政策の基本は「50万円でいいから、きちんと貯めて起業しよう」「資金が底をつくまでやって芽が出なければいったん撤退し、また貯めて再チャレンジしよう」という、きわめてシンプルなものです。ミニマリズム的経営といってもよいでしょう。

「起業するなら創業融資」と、いろんな制度や金融機関を調べる方も多いようですが、しょぼい起業は融資を受けなくてもできますから、とりあえず金融機関とは付き合わずに進める。これが原理原則です。

なぜか。ひとことで言うと「面倒だから」です。もう少していねいに言えば、しょぼい起業では「事業について自分自身で決められること」を大切にすべきと考えるからです。

喫茶店経営がセカンドキャリアとして人気を誇る3つの理由

すこし話はれますが、サラリーマンとして長年真面目に勤めあげた方が「退職後は夫婦で喫茶店でも開きたい」と話すのを聞いたことがありませんか? 失敗が後を絶たないと各所で警告されているにもかかわらず、「夢のセカンドキャリア」として喫茶店経営が不変の人気を誇る理由が、私は3つあるとみています。

えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)
えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)

第一は「社会との接点」。会社を離れても世の中と関わり続けるために、何かしらの労働を必要としているということです。

第二は「老後の不安」。日々の生活をまかなうのに年金だけでは十分でなく、蓄えを取り崩していくのも心細い。あまり心身を酷使せずに収入が得られるなら、大儲けはできなくても安心が手に入るということです。

そして第三、これがもっとも重要ですが、「事業全体が思いどおりになる」ということです。

店の主になれば、かつて仕えたような上司や、無理難題を押しつけてくる取引先はもういません。営業時間は自由、メニューも内装も自由に決められ、迷惑な客が来たら追い出してもいい。会社人生で周囲にさんざん振り回されてきたからこそ、思いどおりに理想を追求できる環境に魅力を感じるのだと思います。