43年にわたってスズキの経営トップを務めた鈴木修会長が、今年6月、会長を退任して相談役となり、経営の一線から退いた。「生涯現役」を公言していた鈴木氏は、なぜ退任を決断したのか。そこには自動車業界をめぐる大変革が影響している——。
スズキの株主総会で会長退任のあいさつを終え、会場を後にする鈴木修氏(右)。左は鈴木俊宏社長=2021年6月25日、浜松市[同社提供]
写真=時事通信フォト
スズキの株主総会で会長退任のあいさつを終え、会場を後にする鈴木修氏(右)。左は鈴木俊宏社長=2021年6月25日、浜松市[同社提供]

91歳のカリスマ経営者が最後に放った言葉

日本企業でカリスマ経営者として名を馳せた代表格の一人が6月25日、経営の一線から退いた。43年にわたって経営トップを務め、スズキを世界的な小型車メーカーに育て上げた鈴木修会長が、同日の定時株主総会で会長を退任したのだ。

御年91歳のカリスマ経営者が最後に放ったのは「軽自動車は芸術品。守り通して」「一にも二にも電動化」という言葉だった。

鈴木修氏が退任を決断したのは世界の自動車産業が一大転換期に突入したことと無縁でない。業界トップ、トヨタ自動車の豊田章男社長はこの事態を「100年に一度の大変革期」と形容する。世界の自動車産業は足元でコネクテッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェアリング(Sharing)、電動化(Electric)の頭文字を取った「CASE」という新しい領域での技術革新が加速度を増して進む。

しかも、IT大手といった異業種やスタートアップ企業も参入をもくろみ、既存の自動車産業にとっては時計の針を戻せない異次元の世界に突入している。