※本稿は、中野信子『脳を整える 感情に振り回されない生き方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「家族は仲良くあるべき」の“副作用”
人間関係における思い込みのひとつに、「家族は仲良くあるべき」というものがあります。
確かに家族の仲がいい状態でいると、社会生活を送るうえでなにかと都合がいいうえ、いろいろな助けを得られるので有利に働くことはたくさんあると思います。
でも、だからといって、家族は仲良くあるべきだと決めつける必要はまったくありません。「家族仲」は本来、誰に評価されるものでもなく、そもそも血縁関係の有無は仲の良さとは関係ありません。個々人がそれぞれの立ち位置で、いちばん心地よく過ごせるかたちを選べばいいのではないかとわたしは思います。
さらにいえば、家族という近い関係だからこそ、感情はもつれます。2016年に摘発された殺人事件(未遂を含む)のうち、半分以上の55%が親族間で起きているという警察庁の調査結果も、その傾向を裏づけています。
それを思うと、無理して「家族は仲良くあるべき」と自分を追い詰めるのではなく、「わたしは親のことが嫌いなんだ」「娘がとても苦手だ」と冷静に事実を受け止めたほうが、余裕が生まれるでしょう。
「家族だから嫌いになることもある」と、ときには考えてみることも必要でしょう。そう考えられると、本来、囚われる必要のない罪悪感などから、心が解放されると思います。