「麻酔科医が足りない」日本の現状

【髙崎】厚労省の研究班による提言がされてから3年経ちますが、現在の日本の無痛分娩をめぐる状況はいかがでしょう。

【海野】医療体制自体は、大きくは変わっていません。無痛分娩は、診療所の産科開業医の先生も、麻酔科の先生も行っています。本来なら、手術の麻酔も無痛分娩の麻酔もすべて、専門家の麻酔科医がやったほうがいい。ですがそうできるだけの数の麻酔科医が日本にはいない。絶対的に足りません。

麻酔医によって監視されている
写真=iStock.com/HRAUN
※写真はイメージです

2017年の日本産婦人科医会の調査で分娩施設の麻酔科医の配置数を調べましたが、お産をしている病院での中央値は3人、診療所での中央値は0人でした。診療所には、専任の麻酔科医はほとんどいません。今、産科医が麻酔から手を引くと、病院ですら帝王切開はできなくなるところがでてきます。現状では「麻酔は麻酔科医のみがやること」とすることはできないんです。

日本で安全な無痛分娩の体制を整える上での最大の課題は、麻酔科医が足りないこと。麻酔科医は手術室の麻酔やICUなど、生死に関わる場面でたくさんの仕事があります。産科の方まで完全にカバーできるようになるまで増えるには、どうしても時間がかかってしまいます。さまざまの取り組みはしていますが、妊婦の方々には、公開された情報の中で考え、ご判断いただくしかない現状です。

医療介入をするなら「ちゃんとした形」でやるべき

【髙崎】最後に先生にお伺いしたいのですが、なぜ先生は、無痛分娩をするのでしょうか?

【海野】アメリカの麻酔の考え方では、「痛みは悪」。苦しく、マイナスなものなので、除けるなら除くべきものと考えます。だから無痛分娩の教科書には、「妊婦にしたいという希望があれば、それだけで無痛分娩をする十分な理由である」と書かれています。

また無痛分娩は、できる体制があるから、希望する人が出てくるものでもあります。私は、希望する人がいるならやるべき、という考えです。お産の形はいろいろあります。重いものも軽いものもあり、その受け止め方も人それぞれです。無痛分娩が選べるなら素晴らしいことですが、医療介入である以上、「ちゃんとした形」でやるのが前提です。中途半端は良くない。体制を整えていこうと、前述のJALAで活動しています。

取り組みは始まったところで、業界内でも足並みが完全には揃っていません。妊婦の皆さんには、今どこができていて、どこができていないかをご理解いただきたい。そうしてそれぞれのお産で、後悔のない選択をしてほしいです。

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