結論を出すまでの時間を決め、言い尽くさせる
併せて、延々と議論を続けないように結論を出すお尻の時間を決め、議論をそれに合わせるようにしました。「時間がなくて、言いたいことがあったのに言えなかった」という不満を残さないために、事前に双方の主張を開示し、反論の準備期間も与えました。案の定、当事者たちは事前に十分に準備をして議論に臨みました。
言い尽くさせる、というのも裁判の仕組みの根幹です。原告・被告とも十分に主張を言い終えると裁判を傍聴する関係者も含めて「ここまで言ったのだから、あとは裁判官の判断に委ねよう」という雰囲気になります。言いたいことを全部言い合って、最終的な判断は裁判官に委ねる――この状態に持っていくのが裁判の鉄則です。
大阪府の財政再建では、こうした手続きを、全部局の主要テーマについて、何週間にもわたって実行しました。財政再建プロジェクトチームと各予算要求部局が繰り返し議論をして、話を黙って聞いていた僕が最終的に「これは削減」「これは残す」という判断をしていきました。膨大な量です。
もし議論を尽くすという手続きをいい加減にしていたら、僕が決定したことに対して、各部局は「この予算は絶対に必要です」と延々と抵抗を続けていたはずです。各部局だけでなく、部局の背後にいる利害関係者たちも府庁に押しかけてきたでしょう。
しかし、適切なプロセスを踏んだことによって、僕の最終的な決断に各部局は従い、利害関係者たちもある程度は理解してくれたのだと思います。こうして、大阪府全体が財政再建に向かって踏み出すことができ、実現不可能と言われていた財政改革を成し遂げることができたのです。