失敗しない計算ばかりしていると、人生がつまらなくなる
「失敗したら、それが汚点となって、のちのち恥ずかしいんじゃないか?」
「告白して断られたら、みんなに知られてしまうんじゃないか?」
「転職するといったら、上司は何と言うだろうか?」
何か行動を起こそうと思うと、頭の中で、いろいろなシミュレーションが始まります。どうすればリスクをとらないですむか。恥ずかしい思いをしないですむか。さまざまな計算が働きます。とくに若いときほど、計算してしまうものです。
僕のメンターのアメリカ在住の吉田潤喜さんは、19歳のときに単身京都から渡米、ゼロからヨシダソースを世界中に展開し、ソース王と言われる人物です。経営は直感だという話をいつもされています。対談させていただいたとき、
「アメリカでMBAを取っていたら、どんな経営者になっていたと思いますか?」
と聞いたところ、
「それだけ賢かったら、ワシ、ソース屋なんかやらへんかったと思う」
と言われたので、会場が爆笑になりました。
「どう考えても、素人がつくったソースが、スーパーに並んでいるキッコーマンとかハインツと同じ棚に入っていけるはずがない」というのです。
「情熱に99パーセントはない。100パーセントが情熱だ」
計算したりシミュレーションしたり、「失敗したらどうしよう」と思っているうちは、絶対に起業することはできないと言っていました。うまくいくかどうかではなく、「失敗してもいいからやりたい」という気持ちにならないと、道は開けないのです。
吉田さんは、「情熱に99パーセントはない。100パーセントしか情熱とは言わない」と思って、ものすごい熱量で仕事をしてきたそうです。
そういう一生懸命な姿を見たのが、当時まだ2店舗しかなかったコストコの創業者ジェイムズ・セネガル氏でした。吉田さんの情熱に感動したセネガル氏は、
「自分にも夢がある。世界中にコストコのお店を展開できたら、すべての店舗で吉田ソースを並べるから!」
と約束してくれたそうです。
それから40年近くがたちましたが、コストコは世界に約800店舗に拡大しました。いまだにセネガル氏の約束通り、吉田ソースは世界のコストコのすべての店舗に入っているそうです。素敵な話ですね。
それは、吉田さんが計算なしに情熱で走り抜いた結果、起きたことです。
人目を気にして、自分の頭の中でシミュレーションして、失敗しないようにすると、たしかに失敗が少ない人生にはなるでしょう。でも、それでは、つまらない人生になってしまいます。
それが成功するかどうかを気にしないぐらい情熱的にやってみないと、幸せな人生、面白い人生にはならないのです。