「夫妻にだけ責任を帰して幕を引くわけにはいかない」と朝日社説
6月19日付の朝日新聞の社説は「元法相に実刑 不信の払拭 遠い道のり」との見出しを付け、「選挙という民主主義の土台を破壊する行為に、こともあろうに国会議員が手を染める。刑事責任はきわめて重く、実刑は当然といえる」と書き出し、こう訴える。
「夫妻にだけ責任を帰して幕を引くわけにはいかない。事件への自民党の関与の有無や程度は依然闇の中だ」
事件の背景には自民党の勢力拡大がある。安倍前首相と菅首相(当時の官房長官)がどう説明責任を果たすかが大きく注目される。
朝日社説もこう指摘する。
「改選2議席の独占をねらった同党は、当時の安倍首相や菅官房長官が主導して案里氏を2人目の候補として擁立。党本部から陣営には、選挙前に1億5千万円という破格の資金が提供された」
「買収に使った金について克行被告は『手持ちの資金だった』と説明するが、裏づける資料はなく、裁判でも解明されていない。事件に一区切りがついたいま、自民党は夫妻任せにせず、資金を拠出した経緯からその使途までを明らかにして、国民に説明しなければならない」
二階幹事長「政治とカネの問題はきれいになってきている」
読売新聞(6月19日付)の社説はその中盤で「現金を受け取った広島県の地元議員と首長計40人は、いまだに刑事処分を受けていない。そのことを理由に、多くが今も公職にとどまっており、地元で不信感が高まっている」と指摘し、こう主張する。
「河井被告は今回、実刑判決を受けた。公正な処罰という観点からも、検察は、現金を受け取った側に対する厳正な刑事処分を速やかに行うべきである」
「公正な処罰」。贈収賄事件でもワイロを受け取った側だけではなく、ワイロを送った側も刑事立件される。その意味で今回の検察の捜査は不十分である。
読売社説は後半で「自民党に所属していた議員では、有権者に現金を配るなどした菅原一秀前経済産業相が略式起訴され、吉川貴盛元農相が汚職事件で在宅起訴されるなど、閣僚経験者の不祥事が相次いでいる」とも指摘したうえで、「こうした事件についても、党は説明を尽くしていない。しかも、二階幹事長は『随分、政治とカネの問題はきれいになってきている』と、国民の認識とはかけ離れた発言をしている」と訴える。
沙鴎一歩も二階俊博幹事長の発言には驚かされた。一体、国民の政治に対する不信感をどう考えているのか。こうした人物が自民党を牛耳っているのだから政治が信頼されないのである。
最後に読売社説は「政治への国民の視線は厳しい。襟を正し、自浄作用を示さなければ信頼回復は到底かなわない」と主張するが、日本を代表する自民党には自らに厳しくあってほしい。