民主主義を企業内にも徹底させる方法

【古川】現状の経営者や資本家はたしかに問題があります。でも、はたして現在の労働者たちが今の経営者や資本家を追い出して、代わりに自分たちがその立場に立ったら、本当に公平な社会が実現するかというと、私は少し疑問です。政治の世界でも、苦労人で成り上がった人が権力者になった途端に権力をふりかざす例は、歴史上いくらでもあることです。

結局、権力闘争で今の社会の仕組みをひっくり返していこうとすると、一時は変わっても、再び勝者と敗者を生み出すことになりはしないでしょうか。やはり一人ひとりの意識が変わらないと、本当の意味で社会は変わらないと思います。

【斎藤】階級闘争という点で言いたいのは、むしろ民主主義をもたらしたいわけです。古川さんは、『正義の政治経済学』の中で、「民主主義はどんな人間も自らの欲を完全にコントロールができないという性悪説に立ったシステムである」とおっしゃっています。私も同じ考え方です。だからこそ、所得税や法人税、労働法などによってさまざまな縛りをかけたり、株主たちによる非民主的な会社経営の防御策として、たとえば従業員の持ち株制度をつくったりして、株式会社の中でも民主主義を徹底させる仕組みをつくっていくべきだと考えています。(後編に続く)

(構成=斎藤哲也)
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