仕事の仕方を変えない限り、テレワークは進まない

もちろん、霞が関に「テレワーク」を許さないカルチャーが根強く存在することも事実だ。国会議員による「国会質問」への回答を作る「国会対応」に当たる官僚たちは、国会議員から事前に質問概要が出されるのだが、それが前日のギリギリにならないと出てこないことが多く、結局、深夜残業で翌朝まで回答作りに追われる。しかも省内の各部署とのすり合わせが必要なので、役所に残っていないと仕事にならない、という感覚が強い。

そうして作られた回答は大臣に「レクチャー」する必要があるが、午前中から始まる国会に間に合わせるために、明け方から大臣室に詰めることになる。そもそもテレワークは難しいとされた7000人というのはこうした官僚たちだ。

彼らは翌日の国会質問が自分の所属課に関係ないということが分かるまで、役所に待機が求められる。最近は自宅に戻っていてもよいと指示する課長も増えたが、実際には役所で待ち続ける人が多い。

明かりがついたオフィスで仕事をする人々
写真=iStock.com/kilhan
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時間的な余裕さえあれば、テレワークでも十分に対応できる仕事なのだが、ギリギリの対応ではやはり「対面」が効率的ということになる。課長が待機していれば、課長補佐も動けず、係長も帰ることはできない。そもそも霞が関の仕事の仕方を根本から変えない限り、テレワークは本当の意味では進まない。

「デジタル庁の組織図」に上がる「冗談だろ」の声

「冗談だろ」

そんな声がシステムや組織運営に通じた人たちから上がっている。デジタル庁が9月の創設に向けて設置したインターネットのホームページに掲げられた「デジタル庁の組織体制(予定)」の図である。

デジタル大臣の下に民間出身者が就任するとみられている「デジタル監」が置かれ、その斜め下、つまりラインではないところにCA、CAIO、CDO、CIO、CISO、CPO、CTO、CTrOという8人の「チーフ」が置かれている。CTOならば「チーフ・テクノロジー・オフィサー」といった具合だ。

だが、「チーフ=最高責任者」とは名ばかりに、デジタル監の下に延びる線には、「戦略・組織グループ」など4つのグループの「グループ長」と「次長」が置かれ、その下はいくつものチームに分かれている。明らかにデジタル監という「次官」の下に「局」と「課」が置かれている格好である。霞が関の組織そのものだ。横にはみ出して置かれている「チーフ」がどんな役割や責任を担うのか、この組織図からはまったく分からない。CTOなどを設置しろと言われたので従来の霞が関組織に付け加えてみました、と言った感じなのだ。これで仕事のやり方が変わるのか、デジタル庁自身からDXとはほど遠い組織になってしまうのではないか。