女性は身体だけでなく心でも性を感じる

【坂爪】また、風俗を利用し、恋愛感情をどうしても抑えられなくなってしまう人も、男性、女性に限らずに少なからずいる。そうした部分もジェンダーによる違いはないと初めて知ったとき、少し意外な感じがしました。

柾木寛『「女性向け風俗」の現場』(光文社新書)
柾木寛『「女性向け風俗」の現場』(光文社新書)

【柾木】女性向け風俗では女性がセラピストにはまることを“沼る”と言いますね。なかには、恋愛感情を利用するセラピストもいますからね。

【坂爪】そう考えると、セラピストが女性客と距離感をどうとるか。そこが一番、難しい気がします。疑似恋愛を楽しみたい女性もいれば、悩みを解決したい女性もいる。女性客がセラピストに求めるサービスも多様なわけでしょう。

【柾木】そう思います。最近、よく、いいセラピストの条件はなんですか、と聞かれるんです。スキルや知識、コミュニケーション能力、誠実な人柄が大切なのは当然ですが、仕事を続けていくうち、お客さまとの距離の取り方かなと思うようになりました。

女性向け風俗の難しさは、女性が身体だけでなく、心でも性を感じやすい点にあります。私は、お客さまの予約メールに返信した瞬間からサービスがスタートしていると考えています。特に初めてのお客さまは、不安を抱えて連絡をしてきてくれています。待ち合わせて、ホテルに向かうまでの数分間も、セラピストがどんな男性なのか、ずっと観察しています。その後、施術に入る前に、事前アンケートに必ず答えてもらってから、マッサージに入ります。

私が働く店では、お客さまは3時間で3万円に加え、ホテル代をお支払いいただきます。対価に見合う満足感を与えられているのか。当初、私も不安でしたが、たくさんのお客さまに教えていただきながら、私たちの役割は、女性がいままで誰にも言えなかった悩みや欲求に寄り添うことだとようやく気づきました。

ただ一昔前は、セラピストが店のオーナーも兼ねて、自分の性欲を満たすために風俗営業をしているような店も少なくなかった。「オイルマッサージをしてもらっていたら、いきなり挿入された」という犯罪レベルのトラブルもよく耳にしました。

女性の性への意識は昭和と比べて大きく変わった

【坂爪】女性向け風俗がさらに知られて、利用者が増えれば、そうした悪質な店舗やセラピストは淘汰とうたされていくはず。SNSなどで店やセラピストの評判は一気に広まるでしょうから。

また、経営者自身が女性であるお店もありますよね。経営に女性の視点が入ってきている影響も大きいのではないですか?

【柾木】そうかもしれないですね。昭和なら女性たちが性にかかわる発言をすることすらためらわれた。しかし女性の意識は大きく変わった。彼女たちの声が、いま、女性向け性風俗の世界の秩序をつくっているのかもしれません。(後編に続く)

(聞き手・構成=プレジデントオンライン編集部)
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