有酸素運動はあくまで「補助的手段」

なお、有酸素運動がまったくおすすめできないかといえば、そうではありません。

有酸素運動は、たった5分でも集中力が増したり、ストレスが減ったりといったメンタルに望ましい効果が得られます。そして、20~30分の運動をすると、ストレスがかかったときに分泌されるストレスホルモン「コルチゾール」の分泌量が少なくて済むようになる、ということもわかってきています。

コルチゾールは、副腎という腎臓の上にある小さな脂肪のかたまりにように見える臓器から分泌されています。コルチゾールは、私たちの体を「ストレスに対応できるように」してくれるホルモンです。

しかし、人類の長い進化の過程のなかで、このホルモンが必要になるのは、近代までは緊急事態の折のほんの短時間のことでした。猛獣から逃げる1時間だけ、コルチゾールを分泌すればよかったのです。

ところが、現在は「ストレス社会」などといわれるように、持続的にストレスがかかるため、コルチゾールが長時間分泌され続けるようになりました。人類の体は、コルチゾールの長時間分泌にさらされ続けることに適応していないのにもかかわらず、です。

そのため何が起きるかというと、脳の理性や記憶を司る「前頭前皮質」や「海馬かいば」の萎縮いしゅくです。脳細胞が通常よりも早く死んでいき、しかも増えにくくなります。最初は「短期記憶」から低下していきます。実際、ストレスがかかり続けると、ちょっとしたことが覚えづらくなります。

それだけに留まらず、コルチゾールは過食の引き金になったり、「中心性肥満」というものを引き起こしたりすることもわかっています。

減量前の数サイズ大きなデニムを履いてみせる女性
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです

中心性肥満とは、おなか周りが出てくる肥満で、本書のメインテーマである、内臓脂肪が多いタイプのことです。

有酸素運動は、このコルチゾールの分泌量を減らしてくれます。このため、ストレスは減り、脳の萎縮も抑えられ、過食が抑えられて、脂肪が燃えやすくなります。つまり、運動のみで体重を減らすのは困難ですが、運動は体重を減らす助けにはなってくれるというわけです。

ただし、BMI30以上の場合には、いきなり走ったりすると膝や腰などの関節が負荷に耐えられないかもしれません。その場合は、ウォーキングやサイクリング、水中ウォーキングなど、関節への負荷が少ないものにしておきましょう。

「筋トレの後に有酸素運動」でエネルギー消費を爆上げ

「筋トレ+有酸素運動」という合わせ技にすることで、さらにエネルギー消費量を上げることも可能です。筋トレの後に有酸素運動をするのが、最も効果的に体脂肪を減らすことができるからです。

筋トレで事前に筋肉内に蓄えられている糖質(筋肉グリコーゲン)を使っておけば、すぐに脂質代謝や糖新生に代謝を切り替えることができます。

糖新生では、エネルギーを使って、タンパク質を糖質に変換するので、さらにエネルギー消費量が増えます。