1年で14キロの減量に成功、脂肪肝も改善した医師・水野雅登氏が、最新医学知識と自身の体験をもとに1年で14キロ痩せた医師が教える 医学的に内臓脂肪を落とす方法』を上梓。さまざまな病気や不快症状の温床にもなる内臓脂肪を効率的に落としつつ、同時に糖尿病や高血圧の改善も期待できる方法をわかりやすく紹介する同書から、そのエッセンスを3回に分けて特別公開する──。(第2回/全3回)

※本稿は水野雅登『1年で14キロ痩せた医師が教える 医学的に内臓脂肪を落とす方法』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

多少の運動では全然足りない現実

健康診断などで「体重を落としましょう」と患者さんに言うと、すぐに「運動します!」とか「運動してなくて……」といった返事が返ってきます。

しかし、私は運動のみで体重を落とすことはお勧めしません。有効性という点でも、運動のみで体重を落とすのは至難の業。マラソン選手のように毎日、ものすごい距離を走るようなハードな運動を続けない限り、体重を落とすことは不可能だと言っておきましょう。

とはいえ、日本人もひと昔前の明治時代までは、かなりの運動量でした。

当然ながら、コンロをひねれば加熱調理ができる……ということはなく、まきを割ったり、火にくべたり。水が必要なときは井戸で汲み、掃除は掃除機ではなくほうきやぞうきん、洗濯は洗濯機ではなくタライと洗濯板を使うなど、体を常に動かす必要が、現代と比べられないほど多くあったわけです。

電車や自動車や自転車も普及しておらず、移動はもっぱら徒歩でしたし、仕事も座ってデスクワーク、なんていうことも一部の人を除いてはありませんでした。

現代日本人からすれば、考えられないくらいの運動量が、必然的に毎日毎日、絶えることなく続いていたのです。

体重計の向こうでうずくまる女性
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

有酸素運動でかえって筋肉が減る?

ウォーキングや水泳などの有酸素運動が体に良いかどうか? といえば、もちろん有酸素運動は体に良い影響があります。健康面だけに限らず、精神的にもメリットがあります。たった5分のウォーキングでも心の健康が増す、といった報告もあります。

ただし、「優先順位」が重要です。なぜなら、「いわゆる有酸素運動を長時間する」ことにはデメリットもあるからです。タンパク質などの栄養を摂取せずに長時間の運動をすることで、筋肉が減る場合があるのです。

タンパク質不足を放置したまま運動すると、体は体内のタンパク質、つまり、筋肉を削ってエネルギーを産生するしくみ「糖新生」を発動します。もう少し詳しく言うと、絶食中の運動では、体内の糖の蓄えが尽きると、脂質の代謝が始まります。しかし、運動量が多かったり、持続していたりすると、今度はタンパク質を糖質に変換することが始まります。これが「糖新生」です。

結果、筋肉を育てるどころか、かえって筋肉を減らしてしまい、さらに太りやすい体をつくることになってしまいます。