※本稿は水野雅登『1年で14キロ痩せた医師が教える 医学的に内臓脂肪を落とす方法』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
多少の運動では全然足りない現実
健康診断などで「体重を落としましょう」と患者さんに言うと、すぐに「運動します!」とか「運動してなくて……」といった返事が返ってきます。
しかし、私は運動のみで体重を落とすことはお勧めしません。有効性という点でも、運動のみで体重を落とすのは至難の業。マラソン選手のように毎日、ものすごい距離を走るようなハードな運動を続けない限り、体重を落とすことは不可能だと言っておきましょう。
とはいえ、日本人もひと昔前の明治時代までは、かなりの運動量でした。
当然ながら、コンロをひねれば加熱調理ができる……ということはなく、薪を割ったり、火にくべたり。水が必要なときは井戸で汲み、掃除は掃除機ではなくほうきやぞうきん、洗濯は洗濯機ではなくタライと洗濯板を使うなど、体を常に動かす必要が、現代と比べられないほど多くあったわけです。
電車や自動車や自転車も普及しておらず、移動はもっぱら徒歩でしたし、仕事も座ってデスクワーク、なんていうことも一部の人を除いてはありませんでした。
現代日本人からすれば、考えられないくらいの運動量が、必然的に毎日毎日、絶えることなく続いていたのです。
有酸素運動でかえって筋肉が減る?
ウォーキングや水泳などの有酸素運動が体に良いかどうか? といえば、もちろん有酸素運動は体に良い影響があります。健康面だけに限らず、精神的にもメリットがあります。たった5分のウォーキングでも心の健康が増す、といった報告もあります。
ただし、「優先順位」が重要です。なぜなら、「いわゆる有酸素運動を長時間する」ことにはデメリットもあるからです。タンパク質などの栄養を摂取せずに長時間の運動をすることで、筋肉が減る場合があるのです。
タンパク質不足を放置したまま運動すると、体は体内のタンパク質、つまり、筋肉を削ってエネルギーを産生するしくみ「糖新生」を発動します。もう少し詳しく言うと、絶食中の運動では、体内の糖の蓄えが尽きると、脂質の代謝が始まります。しかし、運動量が多かったり、持続していたりすると、今度はタンパク質を糖質に変換することが始まります。これが「糖新生」です。
結果、筋肉を育てるどころか、かえって筋肉を減らしてしまい、さらに太りやすい体をつくることになってしまいます。