新型コロナウイルスは感染力が強いが、無症状や軽症で済むケースも多い。しかし最近では、完治したにもかかわらず微熱を訴える人が増えているという。「コロナ後遺症外来」を設立し、1500人以上の患者を診てきた平畑光一医師が解説する――。

※本稿は、平畑光一『新型コロナ後遺症 完全対策マニュアル』(宝島社)の一部を再編集したものです。

ベッドに入り、心配する男性
写真=iStock.com/PonyWang
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微熱や体の痛みを繰り返す厄介さ

2020年3月、ほかの病気で私のクリニックに通っていた患者さんが、微熱や体の痛みを訴えて来院されました。症状は突然現れて、出たり消えたりを繰り返し、何が原因かわからない。ほかの内科で検査をしても異常がないため、「心因性」として精神科に行くように言われたといいます。

私はこの患者さんを長く知っていましたが、精神疾患があるようには思えず、それ以前に、軽い風邪のような症状があったことから、新型コロナウイルス感染症を疑いました。当時はまだ、新型コロナ感染後にさまざまな後遺症が現れることが知られていませんでしたが、同様の症状を呈する患者さんがたくさんいることを知り、この患者さんは新型コロナ感染症の後遺症であると確信しました。

当初は目の前で苦しんでいる患者さんをなんとかしなければと手探りで診察していましたが、当院がコロナ後遺症に対応していることが口コミで広がり、全国からコロナ後遺症に苦しむ方が訪れるようになりました。そこで、しっかりと向き合うために、「コロナ後遺症外来」を設立し、これまでに1500人以上の患者さんを診察してきました。

症状も時期もバラバラ、何度も繰り返す

新型コロナ感染症は症状が出ないことが多く、多くの場合、軽い発熱程度で治ってしまいます。抗体ができてもすぐに消えてしまうため、新型コロナウイルスに感染したかどうかはっきりわからないこともあります。そうした患者さんが、のちに後遺症を発症し、原因がわからずに苦しんでいることがとても多いのです。

コロナ後遺症は症状が実にさまざまで、発症する時期も人によって異なります。医師にもわからないことが多いため、新型コロナの後遺症だと気づくまでに時間がかかってしまうのです。

コロナ後遺症は、いったん改善してもまた繰り返すことが多く、長く付き合っていかなければなりません。無理をすると悪化することから、患者さんはもちろん、周囲の人にも正しい知識が必要です。倦怠けんたい感や脱力などの症状は決して本人が怠けているわけではありません。コロナ後遺症を決して他人事と思わず、正しい知識を身につけていただきたいと思っています。

そこで、新型コロナウイルスに感染して軽症で済んだ方、無症状のまま感染した方に向けて、『新型コロナ後遺症 完全対策マニュアル』(宝島社)をまとめました。現在、世界中の医療機関からさまざまなエビデンス(科学的根拠)が報告されています。あくまで、2021年3月末の時点でのコロナ後遺症への対策であることをご理解いただけますと幸いです。