「Go To トラベル」東京追加翌日に破たん

かまぼこの町・小田原で、老舗業者が倒産するのは、今回が初めてではありません。かまぼこメーカーとしては後発ながら、業歴400年を超える「美濃屋吉兵衛商店」が、2019年6月に破産したばかりでした。実は、当社と美濃屋には同業者以上の接点があったのです。市内の当社所有不動産を美濃屋が賃借し、本社を構えていたのです。

帝国データバンク 情報部『コロナ倒産の真相』(日経プレミアシリーズ)
帝国データバンク 情報部『コロナ倒産の真相』(日経プレミアシリーズ)

経営多角化の失敗で躓いた美濃屋に対し、当社は本業一筋を貫いていました。しかし、業容拡大に伴い借入金が膨れあがり、長年経営を圧迫し続けた点は同じでした。年商を超える借入金ゆえ、コロナ禍の緊急時でさえ制度融資を受けられるだけの調達余力も残っていなかったのです。

また、内部管理体制におけるガバナンスの甘さも酷似しています。当社の場合、20年もの間、経理担当役員による横領を看過し、自社の経営体力を奪う遠因となりました。そして、地元の観光需要に左右されるビジネスモデルも共通しています。足下のコロナ禍だけでなく、2019年10月の台風19号、大涌谷の噴火警戒レベル引き上げなどで、箱根や小田原の観光需要が落ち込むたびに販売減を強いられてきました。

2020年10月1日、政府の観光支援事業「Go To トラベル」の対象に東京発着旅行が追加されました。初めての週末を迎えた3、4日、箱根地区も多くの観光客でにぎわっていました。「たら」「れば」をいっても仕方ありませんが、この追加決定がもう少し早く行われていれば、最大のかきいれどきである年末商戦を前に、150年を超える歴史に幕を下ろす最悪の事態は避けられたのかもしれません。

【関連記事】
「髙田明の娘」と言われるのが嫌で他人を装っていた私が、父の跡を継いだワケ
会議で重箱の隅つつく「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問
「仕事やお金を失ってもやめられない」性欲の強さと関係なく発症する"セックス依存症"の怖さ
子どもに月経や射精について話すときに「絶対使ってはいけない言葉」2つ
「家を買うなら急いだほうがいい」2025年の新築マンションは今より必ず高くなる