「なぜ問題となるのかさっぱり分からない」
最初に話を聞いたのは、ベテランのスタイリスト・Aさん。実はAさんに「フジテレビの女性アナウンサーのステマ疑惑に関係して、話を聞きたい」と伝えた時、Aさんはこの問題の存在自体を知らなかった。
そこで筆者が報道内容を説明すると、Aさんはしばらく考えたのちに、こう話し始めた。
「えーと、すみません。それが問題になっているのですね? 何がいけないのか私にはさっぱり分からないのですけれど。そういうことはぶっちゃけどこの局のアナウンサーさんもやっていらっしゃると思うのですが」
そして、Aさんはこう続けた。
「私たちスタイリストは『プレスルーム』という、ファッションブランドなどの報道やPRを担当する場所に行って、番組で使用する衣装を借りることが多いのですが、こうした『プレスルーム』は、新商品などの発売時に『プレゼント枠』を設定します。例えばブランド物のバッグとか靴とかでも、『影響のある人5人にプレゼントする』ということで、その枠の中に女性アナウンサーの方が入ることは多いんです。イメージが良いですから」
プレゼントの対価はSNS投稿
また、企業側がインフルエンサーとしての宣伝効果を狙って新製品をアナウンサーなどの出演者に無料でプレゼントし、受け取った側がその対価としてSNSに写真などをアップすることは日常的に行われている。先述のベテランスタイリストはこう話す。
「そして『プレスルーム』から私たちに『タレントさんやアナウンサーさんにつないでほしい』と声がかかります。ですから私たちが仲介して『こういうバッグをプレゼントしたいみたいですよ』と声をおかけすると、だいたいの皆さんは『あ、SNSにアップすればいいんですよね』とお答えになりますよ」
そしてそうしたプレゼントは「それがなぜ問題となるのか、さっぱり分からない」というくらいの頻度で日常的にあるということである。
さらにAさんに「商品をタレントが使うことで、謝礼としてお金が支払われることはあるのか」について聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「通常出演者のみなさんは、あまり気に入らないようなものはプレゼントされても受け取りませんが、たまに現場などで『この人のセンスとは全然違うな』というようなものを身につけられている出演者さんに出くわすことがあります。明らかに違和感があるんです。この間も、クールな格好をしていることが多い若手のお笑い芸人さんが、かわいいキャラクターものの靴を履いていて、思わず笑ってしまいました。そういう時には、『この人はお金をもらったんだな』と思わざるを得ないですよね」