「最近でこそ、だんだん厳しくなってきましたが、かつてはニュースの特集や情報番組の取材先から制作会社がこっそりPR会社などからお金をもらってその会社の商品を取り上げることが結構ありました。局に企画書を出す時に自然にその商品を潜り込ませれば、バレることはほぼありませんからね」

「ちゃんと『タイアップ』ということで局側に話を通していれば問題にはならないんですけど、報道・情報系の番組ではなかなか認めてくれないんです。だからコッソリやる訳です。でも制作会社が不当に儲けようと思ってやっているわけではありません。番組制作費があまりにも安いから、赤字にならないようにということで仕方なくやっていたんです」

報道・情報番組などの取材が「裏金」によって歪められてしまうのは大問題だ。さすがにそうした事態は、今は改善されつつあるようだが、相変わらずテレビ関係者の「ステマ」への認識は甘いと言えるのではないだろうか。

無料で得たものの代償は大きすぎる

ステマの一番の問題点は、一般の人が気づかないところに、分からないように宣伝を紛れ込ませることによって、人々が自由な選択をすることを阻害している点にある。

企業側の広告活動の一環で、メディア露出を狙い、テレビに出演する芸能人に商品を身につけてもらったり、プレゼントする場合が日常的に行われている。ただ、これらをすべて「ステマだからけしからん」と批判できない難しさはある。とはいえ、情報を扱う女性アナウンサーや番組制作者は別だ。特に敏感にならなければならない。

かつてテレビ業界は「ステマ」的なお金で足りない制作費を補ってきた。しかし、インターネットメディアに触れることの多い現在の視聴者にとってそれは「とんでもない情報操作」と捉えられかねない。こうした「ステマ疑惑」が報じられることで、テレビはメディアとしての信頼性を一層失いかねない。明らかに得るものより失うものが大きすぎる。

局も出演者も、まひしてしまった感覚を改め、姿勢を正さなければテレビに未来はないのだ。ぜひ、今回の女性アナウンサーの「ステマ疑惑」をうやむやにせず、再発を防ぐ手を講じることでより良い番組制作環境をつくっていってほしいと思うのだ。

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