アウトバーンで電話会議するドイツ流「隙間時間」の使い方

効率的に働くことに情熱を燃やすドイツでは、就業時間中は隙間時間も最大限に活用します。

隅田貫『ドイツではそんなに働かない』(KADOKAWA)
隅田貫『ドイツではそんなに働かない』(KADOKAWA)

欧米の映画やドラマを観ていると、車を運転するときにハンズフリーイヤフォンをつけて、取引先と会話をするようなシーンが出てきます。私もメッツラー社に入って、これを体験しました。社用車にハンズフリーの電話が装備され、アウトバーン(高速道路)を運転しながら電話会議に参加したこともあります。移動時間でも効率的に仕事ができる環境を整備する会社の方針です。

ちなみに、日本ではハンズフリーで電話しながらの運転は禁止している自治体が多いようです。理由は集中力が落ちて事故が起きやすくなるから。

ドイツは日本と違って首都圏に主要企業が集中していないので、地方への出張は頻繁にあります。フォルクスワーゲンやライカの本社も周りに何もないような地方都市にあるのです。アウトバーンを使っての移動が多いので、その時間もムダにしないという考え方なのです。

この移動中の電話会議はたいへん効率的です。たとえば日本だったら商談のときは担当者以外に課長や部長も出席し、新人社員も参加して、互いに4~5人ずつ並んで話をすることはよくあります。しかし、発言をするのはたいてい1人か2人。新人社員は一言も発しないので、参加するだけ時間のムダです。これも生産性を奪っている日本の習慣だといえます。

電話会議なら担当者同士のやりとりで済むので、他の社員の時間を奪うことはありません。車に乗りながら話すのはともかくとして、日本でも電話会議で済むような場面はかなりあるでしょう。電話なら相手に見えないので、ランチをしながらでもできます。これも効率的な仕事の進め方の一つです。

残業を常態化しないための「労働時間貯蓄制度」

時は金なり。

この考え方は古今東西同じのようで、ドイツ語でも「Zeit ist Geld(時間はお金である)」ということわざがあります。

そして面白いことに、ドイツには本当に「時間をお金に換える」ような法律があります。それは「労働時間貯蓄制度」です。

ドイツ人も残業をまったくしないわけではありません。ただ、その残業を常態化しないために仕組みをしっかりつくってあるのです。

労働時間貯蓄制度は残業した時間を労働時間貯蓄口座に貯めておき、ある程度貯まったらたとえば有給休暇として使える制度です。まさに時間をお金として考えているのだといえるでしょう。