筆者の知人の愛飲者(30代男性)は、「薄い飲み口なので朝のルーティンにしやすい」と話す。「職場のコーヒーマシンで濃厚な味は味わえるので、濃淡のちがうコーヒーを分けて飲みたい」そうだ。こうした「コーヒーの使い分け飲み」をする消費者は一定層いると聞く。
働く人材や環境の変化は、コロナ禍の在宅勤務以前から進んでいた。
「昔と違い、IT系で働く人が増えました。クラフトボスはこうした層にも訴求しています。例えばシステムエンジニアやプログラマーの方は、24時間、365日交代制の勤務です。多くはプロジェクトごとに働く会社が変わります。この人たちにインタビューしながら、クラフトボスで“新しい相棒”像をつくっていったのです」(大塚氏)
一方、BOSSが発売されたのは約30年前の1992年。缶コーヒーの愛飲者は現場作業員や運転手といった現業系がコアユーザーだった。それは現在も変わらないという。
市場はジョージア、ボスの寡占状態
コーヒー飲料を好む人は、どのブランドを支持するのだろうか。今度はコーヒー飲料の上位7ブランドを、2010年と2020年の数字で紹介したい。
この10年で上位ブランドはあまり変わらないが、販売数量はジョージアとBOSSの2つが圧倒する。味に加えて2ブランドが入る自販機台数が多いのも一因だろう。なお、「缶・ペットボトルなどの清涼飲料自販機」の数は約212万台(2018年。一般社団法人・日本自動販売機工業会調べ)、清涼飲料全体では約240万台だ。2010年には250万台超あり、近年は減少傾向にある。
「飲料の薄味」ニーズは進むのか?
自動販売機の話が出たついでに、飲料の嗜好の変化も考えたい。
実は、サントリー食品が自販機限定で販売する「GREEN DA・KA・RA すっきりしたトマト」というトマトジュース(缶)がある。気になって買って飲むと、クラフトボスのように、ごくごく飲める味わいだ。
競合のトマトジュース(ペットボトルや紙パック)も飲み比べてみた。こちらも以前のドロッとした味わいから、少しサラッとした味わいに変わっていた。同社を取材した際に「消費者志向を見据えてリニューアルした」と聞いた。今後も「飲料の薄味ニーズ」は進むのか。