【藤井】しかし、役所や大企業勤めではなく年金暮らしでもない人、とくに飲食店、旅館やホテル、旅行業やタクシー、興行やエンタテインメントなど、お客さんに足を運んでもらってなんぼの商売は、自粛が長引いて人びとが家に引きこもり続ければ、つぶれてしまう。これに対して補償を出すべきだというのは当たり前。諸外国がふつうにやっていることです。

「国民に対する裏切りではないか」

【田原】日本では、そんなことはできない。1200兆円も借金がある。さらに100兆円200兆円なんてカネを出せるはずがない──と、みんな反対した。

ジャーナリストの田原総一朗さん
ジャーナリストの田原総一朗さん(写真提供=アスコム)

【藤井】MMTが教える財政出動でカネは出せるのだ、という提案を検討もせずに、財務省が出せないといっているから出さないとは、何事か。それこそまじめに働いて納税し、家にいろという要請も従順に受け入れている国民に対する裏切りではないか。国民いじめ、虐待ともいうべき大問題ではないか──これが僕の主張です。

【田原】そのラジオ番組で、粗利補償をすべきといったんですか?

【藤井】そのときは粗利補償という言葉は使わなかったと思います。補償の具体的な手法以前に、国民よ覚醒してくれ、もっと怒れ、怒っていいんだ、と訴えたかった。

【田原】そもそも日本経済がデフレの深い底に沈んでしまったのは、別に国民が怠けていたせいなんかじゃない。政府がデフレ下の増税という誤った経済政策を繰り返したからだ、というのが藤井さんの考え。だから、余計に頭にきたわけね。

遅れた緊急事態宣言、曖昧な自粛要請、少ない補償、たれ流しのメディア…

【藤井】一つ強調しておきたいことがあります。最初の緊急事態宣言は2020年4月7日に東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県に出て、16日に対象を全国に拡大。5月14日に39県で解除。21日に大阪・京都・兵庫で解除。25日、1カ月半ぶりに残る首都圏1都3県と北海道で解除、という流れでした。

でも、「報告された感染者数」のピークは2020年4月11日です(全国の新規感染者720人)。そうなる「現実の感染」のピークは3月25日ころです。

【田原】ある人が新型コロナに感染してから、発症・受診・PCR検査・検査結果判明・報告・全国で報告をとりまとめて発表までに、2週間か、それ以上のタイムラグが生じる。だからそうなる。

【藤井】はい。今日わかった感染者数は、2週間前に感染した数である、と。死亡はさらに遅れて感染の3~4週間後くらい。日本のように高度な医療機器で手厚い治療をする国では、重症者が長く持ちこたえますから、死亡はなお先になる。