ビジネスは料金と利便性だけでは決まらない

一方、カーシェアの問題点は何か。

まずステーション数は多いものの、2~3台程度のところが多く、希望時間に借りられるとは限らない。

また、カーシェアが低料金を実現しているのは、ステーションには係員はおらず人件費がかからないからである。逆に言うと、貸し出しが終わったあと車の管理をする人がいないということも意味する。

従って借り受けた時に車はひどく汚れているかもしれないし、燃料も空に近いかもしれないのである。当然除菌などもされていない。そのため借りた人が給油や洗車をした場合には30分ぶんの料金が割引になるが、時間と手間がかかることも事実で、急いでいる場合などでは不都合が発生する可能性もある。

そもそも、誰が乗ったかわからない車を、そのまま掃除も除菌もせず使うことに抵抗を感じる人は多いだろう(特にコロナ禍においては)。

レンタカーであれば清掃・除菌され、燃料満タンの貸し出しが常識である。需給面でも、ある営業所の車が足りなくなれば別の営業所から車を調達するだろう。レンタカーの営業所は駅前や空港など便利なところにあり、公共交通機関との組み合わせで使う場合の利便性も高い。

ドイツ・ハンブルクのカーシェアリング駐車場
写真=iStock.com/ZZ3701
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カーシェアは一部の大都市居住者向け

多くのカーシェアは毎月の基本料金があるので、月1回以上使わない人には料金面でのアドバンテージも薄れる。カーシェアに向いているのはそれなりの頻度で車を使うが、所有するコストは負担したくない、という人ということになる。

しかし私のように郊外に住んでいると、毎日の買い物などにも車は必須であり、いちいち予約したりステーションに借りに行ったり返しに行ったりするのも面倒である。自宅に駐車スペースがあれば所有してしまったほうが、コスト的には不利でも圧倒的に便利である。

汚れていても、自分が汚したものであればそれほど気にならないであろう。SHARENOWは清掃・消毒済みの車を利用者の自宅まで届ける有料サービス(30ユーロ)を始めたが、それではコスト的アドバンテージはなくなってしまう。

このように考えると、カーシェアの利用者は都市中心部など、駐車場代等の保有コストが高いエリアに住みながら車をある程度の頻度で使いたい、という人に限定されるのだ。日本でも海外でも、カーシェアのステーションが大都市に集中しているのはそのためだ。

しかし大都市では公共交通機関が発達しているため、全く車を利用しなくてもさほど不便ではないし、手を上げれば止まってくれるタクシーもたくさん走っている。つまり、冷静に考えると、カーシェアの需要というものは極めて限定的なのである。しかもステーション数は多いとはいえ、家のすぐそばにステーションがある人は限られる。

一方で、郊外や過疎地では所有のほうが圧倒的に便利ゆえ、需要が少なくステーション数も車も少ない。借りるためには遠くまででかけなければならないことになり、ますます需要は高まらない。