アメリカ、イギリス、中国からは完全撤退

海外に目を転じるとどうだろうか。CASEという言葉を提唱したのはドイツのダイムラーであり、ダイムラーはいち早くカーシェアビジネスに参入、2008年にCar2goというサービスをドイツのウルムで開始した。BMWも2011年に追随し、レンタカー会社のSixtと組んでDriveNowというサービスを開始した。

両社とも拠点数を拡大し、Car2goはヨーロッパ各国のほか北米や中国にも進出、グローバル展開を目指した。拠点数は大きく増え、特にアメリカでは13都市で展開した。

しかし利用者は思うように伸びず、2018年にはCar2goとDriveNowは合併しSHARENOWという新会社となった。さらに事業を全面的に見直すこととなり、2020年初頭までにアメリカ、イギリス、中国からは完全撤退することになった。

進出した43都市の中で、現在も営業を続けているのはドイツ7都市を中心に欧州8カ国16都市のみである。ドイツ、イタリア以外は各国1都市のみで、どれもその国を代表する大都市である。この16都市で展開している車両数は合計1万1000台あまりで、タイムズカーの半分以下である。GMが2016年から北米で展開しているMavenというカーシェア事業も、2019年に展開していた17都市のうち8都市で撤退した。

カーシェア会社の所有の車ではなく、個人所有の車を貸し出す形のカーシェアビジネスもいくつか誕生しているが、その代表格であるアメリカのGetaround社(ソフトバンクも300億円以上出資している)も世界各国に会員数500万人を誇るが、2020年初頭には経営難となり、従業員の25%を解雇している。

このように欧米では、自動車メーカー自ら設立したものをはじめ多くのカーシェア業者が生まれたが、コロナの前にカーシェアビジネスは大きく縮小してしまっているのだ。

レンタカーとの比較で実際は…?

このように考えると、日本のカーシェア市場の伸び悩みもコロナ禍はきっかけに過ぎず、構造的に伸び代が少なくなっていたと考えるべきではないだろうか。それでは、なぜカーシェアビジネスはうまくいかないのだろうか。

カーシェアとは本質的にはレンタカーの新しい形態である。従来からあるレンタカーとどう違うのか。そもそも、カーシェアが今後爆発的に普及するといわれている所以ゆえんは、料金の安さと利用しやすさである。

まず料金を比較してみたい。

タイムズカーの場合、個人であれば毎月880円の基本料がかかる。この基本料はカーシェアを利用すれば相殺される。

利用料は一番安いベーシックグレードで15分220円、1時間で880円である。6時間までの最大料金は4290円、12時間だと5500円だ。この料金には車両も含めた保険代と燃料代も含まれる。

一方、ニッポンレンタカーで借りる場合は、同等車種の最安料金で12時間まで5500円である。ただし燃料代は含まれず、対物・車両保険を免責ゼロにするためには1日1100円の追加料金が必要だ。また最短の時間単位は6時間で、短時間のレンタルであっても6時間ぶん支払う必要がある。

このように、特に短時間の利用の場合、カーシェアの料金は非常に魅力的だ。また借り受けるための場所の選択肢もカーシェアのほうが圧倒的に多い。タイムズカーシェアのステーションが1万3000以上もあるのに対し、ニッポンレンタカーの営業所は789箇所(2021年4月1日現在)しかない。

料金と利便性は圧倒的にカーシェアが勝る。