大手電力が蛇口を閉めれば、新電力はすぐに干上がる

大手電力の立場に立てば、自社管内で停電間際の状態にあるのに、侵食してくるライバルの新電力に与える電力は「ない」ということだろう。取引市場に供給する電力の8割を占める大手電力が蛇口を閉めれば、発電所を持たない新電力はすぐに干上がってしまう。

菅政権は先に米バイデン大統領の呼びかけで開催された地球温暖化を巡る国際会議で30年までに13年比で46%まで温暖化ガスの排出量削減を目指すことを表明した。これまでの26%からの大幅な引き上げだ。

しかし、日本の電力業界の現状に目を向ければ、お寒い限りだ。大手電力が期待を寄せる原子力発電所は東電による相次ぐ不祥事や、使用済み核燃料の処理を巡って、いまだ結論が出ない状態にある。再稼働のめどが立たない原発も多い。

製造業など大口の需要家の「海外逃避」を招くことに

再生エネにしても太陽光パネルを敷設する平地は少なく、期待を寄せる洋上風力は安定して風が吹く海域が少ない。欧州ではすでに再エネのほうが化石燃料を使った石炭やガス火力発電より安くなっているが、日本では欧州並みに再エネ価格を下げることは難しい。

富士山とソーラーパネル
写真=iStock.com/paprikaworks
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今までは安定的に電力を供給することが電力事業会社の唯一のミッションだったが、ESGが声高に叫ばれる現在は、電気の「質」や「由来」も問われている。要は再生エネを使った「クリーン」な電力かどうかが電力各社に求められているのだ。

再エネに充てる原資を確保しなければならないこの時期に、大手、新電力とも総崩れの事態に、国はどう対応するのか。5年たった電力自由化の検証をせずに脱炭素化を進めれば、「良質」で「安価」な電力供給はおぼつかない。それは後々、日本から、製造業など大口の需要家の「海外逃避」を招くことになる。

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