電力会社に「カルテル容疑」で初の立ち入り検査
4月13日、中部電力と販売子会社の中部電力ミライズ(いずれも名古屋市)、関西電力(大阪市)、中国電力(広島市)の4社が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。公取委がカルテル容疑で電力会社に立ち入り検査に入るのは初めてだ。
容疑は大型工場やオフィスビルなどで使われる「特別高圧電力」と、小規模工場などで使われる「高圧電力」をめぐるもの。それぞれ00年と04~05年に自由化され、電力会社がエリア外の事業者に供給できるようになった。4社は2018年ごろから特別高圧と高圧を巡り、互いの管轄区域を越えて営業活動を行わないよう制限していた疑いがあるという。
2016年の電力小売り全面自由化で同年4月に5%程度だった新電力の販売電力量のシェアは20年9月時点で19.1%に上昇した。家庭向けを含む低圧分野では21.1%まで高まった。
「セブンとNTTの長期契約」に大手電力が焦り
一方、今回の容疑は特別高圧と高圧の分野だ。関電、中部電ともに20年3月期の特別高圧と高圧の割合は全販売量の約7割に達する。家庭向けの低圧に比べて利幅は薄いが、安定して多くの電力を使用するため、送電網など設備の固定費を下げられるという。
このうち「特別高圧」は送電線を工場や施設に引き込む必要があるほか、事故を防ぐための規制も家庭向けや高圧より厳しい。このため、発電所や送電網を持たない新電力にとって参入は難しい。経産省によると、20年9月時点で特別高圧の新電力のシェアは8.5%にとどまる。
このため、業界内では「カルテルの疑いは主に高圧分野だろう」とみる向きが多い。小さな工場や商業ビル、食品スーパーなどが使う高圧は新電力も参入しやすいからだ。高圧分野の新電力のシェアは20年9月時点で24.2%と、16年4月から2倍以上になった。
関電や中部電など電力大手が危機感を募らせる背景には、電力自由化に加え、菅政権が掲げる「脱炭素」の動きがある。需要家も「脱炭素」のため、化石燃料に依存する火力発電から、新電力が売り込みを強める再生可能エネルギーでの電力調達に切り替えつつあるからだ。
その象徴となっているのがNTTがセブン&アイ・ホールディングスから獲得した再エネの長期契約だ。