通知表を持ってきた子供に「お疲れさま」というワケ

【加藤】一方で、今は共働き家庭が増えているので、子供をじっくり見られないという悩みも多いですよね。

『プレジデントFamily2021春号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2021春号』(プレジデント社)

【佐藤】「佐藤さんは専業主婦だったからできたんだ」ってよく言われますけど、仕事も子育てもどうするか決めるのは親自身。親も自分の人生なんだから、誰かと比べて嘆いたって仕方ない。仕事は辞めないで子供との時間を増やしたいなら、仕事以外の時間を減らすしかないですよね。24時間をどう使うか、自分の人生に対する覚悟が必要です。

【加藤】佐藤家では誰かのテストの結果が返ってきたらみんなに見せて、良くても悪くてもワーワーと盛り上がっていたそうですが、そんなふうに明るく受け入れ合える雰囲気づくりって何かコツがあるんでしょうか。

【竹村】もしかしてお子さんたちを比べなかったんじゃないですか?

【佐藤】そうですね。子供同士を比べることは一切しなかった。通知表も模試の結果も返ってきたら私は「お疲れさま」って言うと決めていました。良かったら褒める、良くなかったら何も言わないなどという考えもありますが、結局は二通りの態度をとることになりますから、それは良くないと思いました。それに夫には通知表は一切見せませんでした。うちの場合は夫がおっとりした性格で、「おぉ、こいつは数学がいいな」とか「英語は俺に似てイマイチかな」とか、悪気はなくてもつい比べるような言葉を言いかねない(笑)。

【竹村】私は姉と1歳違いで、二人とも同じ学校だったので、親には悪気はないけれどテストの結果を比べられたのが嫌でしたね。そうすると姉と気まずくなってしまって。

【加藤】心理学などの研究では、子供は結果を評価されると、次から失敗を怖がって萎縮してしまうこと、一方で頑張った経緯や努力を認められた子は「やればできる」「次もっと頑張ろう」などと前向きな気持ちになることがわかっています。

【佐藤】うちは年齢や男女の差別もナシ。1番目と4番目は7歳差ですが、お兄ちゃんのおかずを多めにするとかもナシ。食べられずに残ったら子供同士で分け合えばいいのです。

佐藤亮子さん
佐藤亮子さん(出所=『プレジデントFamily2021春号』)

【竹村】権威的でもなく、子供に媚びるわけでもなく、話し合わせるのはまさに民主的な子育てスタイルですね。海外の研究で、親が○○しなさいと決めることが多い「権威的な子育て」、子供のやりたいようにさせ親が子供を制限しない「消極的な子育て」などがある中で、親の期待を伝えながら、子供の意向につき合う「民主的な子育て」が感情をコントロールする力や自尊心を育むっていわれているんですよね。佐藤さんの子育ては民主的ですね。

【佐藤】子供って体は小さいけど心は大人と同じだと思うんです。名探偵コナンみたいだけど(笑)。だから子供の思いは尊重しようと思っていました。

【加藤】同感です。だから私、子供に何かを「させる」「してやる」っていう表現が好きじゃないです。

【佐藤】私も嫌ですね。「これやってみたら?」とは言うけど、「させる」って感覚はないです。子供が嫌そうだったら親が引き下がる。