国際競争力を目指す最後のチャンスだ

今後、ルネサスに求められるのは、そうした現場の底力を引き上げ、より良いモノづくりを目指す精神を組織全体で共有し、高めることだ。それが、火災前の製品出荷水準への迅速な回復のみならず、ルネサスの競争力向上を支えるだろう。

近年のルネサスには、組織内面の強化よりも、買収による成長の加速を重視してきたように映る部分がある。買収が重要であることに異論はない。ただ、ルネサスの母体となった各企業の風土は異なる。人々の考え方、生き方が異なれば、作るモノも異なる。ルネサステクノロジ時代を含め、リーマンショック後にルネサスが赤字に陥った一つの要因は、より良いモノを、より効率的に生み出すために組織が一つにまとまり、人々が集中力を発揮することが難しかったからだろう。

当面、世界経済全体で半導体不足は続く。それは、ルネサスが国際競争力の向上を目指す最後のチャンスといっても過言ではない。同社経営陣が今回の生産再開および出荷水準の回復への取り組みを契機にして組織を一つにまとめて個々人の集中力を引き出し、研究開発の強化やより良いリスク管理体制の整備に取り組む展開を期待したい。

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