これぞ“メイド・イン・ジャパン”の力だ

4月17日、自動車の走る、曲がる、止まる、を制御するマイコンの世界大手であるルネサスエレクトロニクス(ルネサス)が、火災発生によって一部の稼働を止めていた那珂工場(茨城県ひたちなか市)のN3棟での生産を開始した。それは、安心と安全の象徴である“メイド・イン・ジャパン”のモノづくりを支える“現場力”を世界が再認識する機会になった。

ルネサスエレクトロニクスの那珂工場=2021年4月11日、茨城県ひたちなか市
写真=時事通信フォト
ルネサスエレクトロニクスの那珂工場=2021年4月11日、茨城県ひたちなか市

わが国の雇用などを支えてきた自動車産業を中心に、世界全体で半導体不足が深刻化な状況下、那珂工場の火災によって追加的に半導体供給が落ち込む展開は大きな痛手だ。その影響を抑えるために、自動車、建設、機械などの企業が協力して那珂工場に人材を派遣し、早期の復旧を実現した。

各企業が磨いてきた、サプライチェーンのレベルから環境変化への対応を目指し、高度かつ精緻なモノづくりを継続する組織力(モノづくりの底力)は、わが国経済の財産だ。それは人工知能=AIなどで容易に再現できるものではない。

今後、ルネサスに求められるのは、各産業界からの期待に応えるべく、よりよい車載半導体などの製造技術と事業運営に関するリスク管理体制を強化することだ。そのためには、ルネサスの経営陣が組織全体をより強固に一つにまとめなければならない。それが、ルネサスのモノづくりの精神を育み、競争力向上を支えるだろう。

ダメージは「東日本大震災以上」

3月19日、午前2時47分ごろに、ルネサス那珂工場のN3棟の一部で火災が発生した。同日の午前8時12分ごろに火災は鎮火した。出火元は、N3棟内のめっき装置だった。3月20日の午後1時ごろに警察と消防による現場検証が終了した。

半導体の生産では、クリーンルームと呼ばれる生産施設内の微細なチリや、生産工程で用いられる水や各種化学物質の純度がわずかに異なるだけで、チップの性能に影響が出る。それだけに、火災の影響がどの程度か、ルネサスの取引先企業や多くの半導体の専門家が注目した。

火災の影響は、かなり深刻だった。同社の柴田英利社長はその状況を「東日本大震災以上のダメージ」と評した。ルネサスが公表した鎮火後の工場内部の写真を見ると、製造装置の筐体や内部の基盤などが焼けただれ、焼け落ちた工場の天井や機材が床に山積していた。

それを見た半導体生産の専門家は、「近年の半導体生産ラインの停止ケースの中でもN3棟の被災状況はかなり深刻であり、生産の再開には最低でも数カ月はかかるのではないか」と事態を重く受け止めていた。