全体像から話したほうが理解しやすい

2.説明

「説明」はティーチングの核となる最も重要な部分。知識付与がうまくいくかは、この部分にかかっています。知識をできる限り、早く、正確に伝えたい。そのためには次の2つが大切です。

ステップ1 話材を準備する
ステップ2 組み立てる

「ステップ1 話材を準備する」段階では、付与する知識を、順を追ってリストアップしてもよいですし、思いつくままに挙げても構いません。参考資料からピックアップしていく手もあります。指導者がやりやすい方法で準備すればよいでしょう。

次の「ステップ2 組み立てる」は、ステップ1で準備した話材を並べ替えたり、集約したりしながら伝わりやすいように再構築するステップです。その際の原則は2つあります。

原則Ⅰ 全体→部分
原則Ⅱ 結論→理由

以下、それぞれの原則の意義と使い方を見ていきましょう。

原則Ⅰ 全体像から話す

「全体像から話す」のは、そのほうが理解しやすいからです。

例えば、ある図形をあなたに伝えるとします。次の文章を読んで、どんな図形なのかイメージしてみてください。

×部分から話す
まず、直径4cmの丸があって、それから、その下に横10cm、縦4cmで真ん中が円弧のように1cmぐらいまで絞られている横向きの長方形があって、それから、その下に縦に10cmで底辺が6cmの細長い二等辺三角形があって……
○全体像から話す
ひとことで言うと「けん玉」のような図形だと思ってください。図形は3つあります。上から丸と四角と三角です。一番上の丸の部分は直径4cmの円です。その下の四角は、砂時計を横にしたような形で、真ん中がくびれています。具体的には……

「順を追って丁寧に話す」はNG

明らかに後者のほうが理解しやすく、誤って伝わる可能性が少なくなります。しかし、多くの人は×例のように個々のパーツから話します。それは、話材を準備した後に、組み立てをせず、そのまま伝えようとしてしまうからです。また、伝える精度を上げようとすると、1つずつ、順を追って丁寧に話したくなります。しかし、その結果、相手に伝わらなくなってしまうというのが、はまりがちな落とし穴です。このようなよくない話し方を私は「まず〜それから」パターンと呼んでいます。

○例のほうは、先にゴールを示す話し方です。最初は精度を追求せずアバウトな全体像から伝え、精度は後で上げていこうという作戦です。もちろん、お勧めはこちらです。

このようにアバウトに全体像を伝えるコツは、次のようなフレーズを使うことです。

「ひとことで言うと」
「ざっくり言うと」
「早い話が」

教えるのが上手な人は、こういったフレーズを多用します。