人生の最後を考えると、本当に大切なことに気づく
私は人生の最終段階の医療に携わることで、これまで、たくさんの方々と出会い、たくさんの方々をお見送りしてきました。病気になり、身体の自由がきかなくなったり、人生最後のときが近くなったりすることは、このうえなく大きな苦しみです。
しかし多くの人は、悩み、苦しみ、もがく中で、少しずつ自分の人生を振り返り、そこに意味や価値を見出すようになります。そうしたプロセスを経て、自分の人生を肯定できるようになったとき、人はようやく本当の強さ、心の穏やかさを手に入れることができるのです。
そしてこれは、死に直面している方に限ったことではありません。現在、何らかの苦しみや悩みを抱えている方も、人生の意味を模索し、自分なりの答えを導き出すことができれば、必ず、前を向いて生きていく力が得られるのではないかと、私は思っています。
「もしあと1年で人生が終わるとしたら?」と考えることは、自分にとって本当に大切なことに気づくことであり、苦しみや困難と向き合う力、人と支え合い助け合う力、苦しんでいる人を笑顔にする技術を育むことにもつながります。
この本がみなさんの、そして日本の、世界の将来を照らす、ささやかな光となることを、心から祈っています。