「派遣テレワーク」のニーズに応えるべく新規事業コンテストに参加

平田さん自身も次なるチャレンジをする。2018年に社内の新規事業コンテストで提案したのが「派遣テレワーク」だった。

もともと派遣テレワークのニーズが潜在的にあることは、自身が営業をしていたときから感じていた。ワーキングマザーが増えるなか、在宅ワークができればもっと働けるのに……という人。抗がん剤治療でオフィス通勤が難しいという人、親の介護と仕事の両立で悩んでいる人などから、派遣テレワークを望む声が出てきた。一方、企業側も働き方改革を目的としたテレワーク導入が進みつつあった。そこで平田さんは法務部の女性の先輩と一緒に起案したのだ。

「その方は派遣の法律に詳しく、キャリアも長いのです。新規コンテストというと若者が応募するイメージがあるけれど、私たちも何かできることを考えようと話し合い、派遣社員の方がテレワークできる仕組みを整えようということになりました。介護や育児で辞める人が減ると会社としても多くの就業機会が創れるし、何より働きつづけられればスタッフが喜ぶだろう。2020年東京オリンピック開催をひかえ、企業や国もテレワークを推進し始めているのでこれを検討すべきじゃないかという話になったのです」

「派遣テレワーク」の事業化に立ちはだかった2つの壁

コンテストでは準グランプリを獲得。事業化に向けて検討を進めたものの、なかなか導入が進まない理由の一つに法律の壁があった。例えば労働者派遣法では、派遣元事業者が定期的に派遣スタッフの就業場所(派遣先)を巡回し、契約に違反していないかを確認する必要がある。ではテレワークの場合はいかに巡回するのか、また契約書に就業場所をどう記載するのか判断がつきにくかった。そこで法務から厚労省に詳細を確認してもらうと、契約書の書き方を検討してくれることになり、それが突破口となった。

だが、もっと大変だったのが企業の理解だという。そもそも企業におけるテレワーク導入が進んでいないという実態が判明したのだ。2019年9月末時点で企業におけるテレワーク導入率は20.2%というデータがあった。リクルートスタッフィングの取引先では35%と高かったが、そのうち100社を訪問したところ、さらにわかったことがある。

「実はその100社の中でもテレワークが進んでいなかったのです。どういうことかというと、実施しているのはほとんどが限定的なテレワークでした。従業員の中でも育休明けの人や介護の申請をした人だけがやっているとか、管理職や人事部だけで実施しているとか、結局8割ほどの企業が限定的なテレワークだった。つまり、派遣どころか、従業員にもテレワークが広がっていないのが実情でした」