「わかる」とは情報がつながること
最後に、原因3の「相手のもっている知識を自分が把握していない」についてお話ししていきます。
この原因3を説明していく前に、そもそも“わかる”とは何かを簡単にお話ししておきます。平たく言ってしまいますと、“わかる”とは「自分がすでにもっている情報(知識)と、新しい情報とがつながること」です。
たとえば、自分がAという情報をもっていたとしましょう。そこにBという新たな情報が入ってきたとします。このとき、頭の中で「A、B」がそれぞれ別の状態で記憶されたら、Bをわかったことにはなりません。
「A―B」のようにつながった状態で頭の中に保存されると、「わかった!」となるのです(図表2)。
つまり、“わかる(理解する)”という行為は、「すでにもっているものと、新しいものをつなげる」という作業なのです。
言い換えると、わかってもらう説明の大前提は、話し手が説明の中で新たに追加する情報と、相手がすでにもっている情報(知識)を必ずつながなければならない、ということです。
逆に、もし相手に知識がまったくなかったら、説明をわかってもらうことは不可能だということです。もちろん、普通に生活している以上、もっている知識がゼロという人はいません。知識がないのは、生まれたての赤ちゃんくらいです。
相手は何を「知っている」のか事前に探る
だからこそ、相手にわかってもらう説明は絶対に可能なのです。大切なのは、「相手がどの程度の知識をもっているのか?」――これを、説明する側があらかじめできるだけ知っておくことです。
まずは大まかにでも自分と相手の共通の知識(情報)、つまり共通して知っていたりわかっていたりする部分を事前に探っておくことをお勧めします。
新しい情報を相手のもっている情報(知識)につなげる。そしてまたそのつなげた情報(知識)に新しい情報をつなげる。相手に「わかってもらう」とは、この繰り返しです。
説明内容や準備をしっかり行ったにもかかわらず、説明を相手がわかってくれない場合には、まずその原因を特定するところから始めてみてはいかがでしょうか。