説明が伝わらない3つの根本原因
その根本原因とは、次の3つです。
原因1 相手が説明を聴くための態勢をとれていない
原因2 そもそも自分自身が内容をよく理解していない
原因3 相手のもっている知識を自分が把握していない
イメージは図表1のような感じでしょうか。
まずは、原因1からお話ししていきます。
相手に説明をしてちゃんとわかってもらうには、そもそもあなたの話をしっかり聴いてもらうところから始めなければなりません。「何を当たり前な!」と思う方もいるかもしれませんが、実はこれがなかなか難しいのです。
どんなに説明内容を練って準備しても、相手がこっちを向いてくれなかったら意味がありません。そのため、まずは相手に振り向いてもらって、聴く態勢をつくるところから始めなければならないのです。
私は長年、塾や予備校で講義をしていましたが、実は一番気を遣ってきたのは“いかに生徒に自分の話を聴いてもらうか”ということです。
こういった話をすると、「そもそも予備校には勉強しに来ているのだから、みんな話を聴く態勢はとれているんじゃないの?」と言われます。
しかし、実際の現場はそんなに都合のいいことばかりではありません。
授業の最初の壁は「聴いてもらう」こと
そもそも受験勉強自体に後ろ向きであったり、私が指導している「化学」という科目の性質上、嫌いだけど志望大学で必要な入試科目だから仕方なくやるといった子も少なくありませんでした。
化学は、大量の知識をインプットするだけでなく、イメージの湧きにくい高度な法則も理解しなければならないので、苦手科目になってしまうのも当然だと思います。
私も苦労した立場の人間なので、そのしんどさは痛いほどわかります。そのため、まずは講義に対して生徒に前向きなスタンスをとってもらうこと――つまり、相手に自分の説明を聴いてもらうということが、説明するときの最初の壁なのです。
ちなみに予備校講師という仕事は基本的に年契約なので、働きぶりが芳しくなければ次年度の契約更新はありません。早い話が、クビです。相手が聴く態勢になっていない説明は、説明として機能しない――そんなリスクを予備校講師は痛いほどわかっているのです。