デジタル化に乗り遅れ廃刊の危機に直面している一部の地方紙にとっては朗報と言えるかもしれないが、10億ドル規模の売上高がある大手メディアにしてみれば、箸にも棒にもかからない額といえよう。日本の主要新聞社も、激減する売上高を補うことは難しい。
しかも、契約対象の選別はグーグルに主導権があるため、どの報道機関もパートナーになれるわけではない。すべての新聞社がニューズ社のようにはいかないのだ。
また、経済的支援を受ければ巨大IT企業への切っ先が鈍りかねないというジャーナリズムの本質にかかわる懸念もつきまとう。このため、フランス通信(AFP)のように、警戒心から参加を見合わせる報道機関も少なくない。
まさに「スズメの涙」両雄の本気度が問われている
グーグルの2020年第4四半期(10月~12月)の売上高569億9800万ドル、純利益は152億2700万ドルを計上。これを3年分に単純換算すると、売上高は約6828億ドル(約75兆円)、純利益は約1827億ドル(約20兆円)。「ショーケース」でメディアに支払う10億ドルは、売上高の0.15%、純利益の0.55%にすぎない。
業績絶好調のフェイスブックも、20年第4四半期の決算は、売上高が280億7200万ドル(前年同期比33%増)、純利益は112億1900万ドル(53%増)と、いずれも過去最高を記録。「10億ドル超」といっても、3年分に換算した純利益約1346億ドル(約15兆円)の0.7%でしかない。
グーグルやフェイスブックの企業規模からすれば、まさに「スズメの涙」だ。報道機関と協調し支援するというのなら、拠出額は一桁も二桁も違うはず。両雄の本気度が問われても仕方がない。
今後は、「お恵み」的な一定額の支払いではなく、ネット広告の利益配分といった真に協力関係が築ける本格的な指標を取り入れることが議論されるべきだろう。
「ニュース・ショーケース」や「フェイスブックニュース」の展開は、「ニュースの価値」を見つめ直すスタートに過ぎず、巨大IT企業と報道機関の綱引きは当分続きそうだ。