「ただ乗り」を続けたグーグル、フェイスブック

グーグルとフェイスブックが、ニュース記事の「ただ乗り」批判をかわそうと、無償利用から報道機関に多額の使用料を支払う方向に転換した。背景には、欧米各国の政府が窮地に陥っている新聞社を救済するため、巨大IT企業の規制を強化し法整備を進めている事情がある。

メガネと新聞
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

はたして新聞社は息を吹き返すことができるのか、報道機関と巨大IT企業の綱引きの実相を追ってみる。

グーグルとフェイスブックは3月中旬までに、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルや英紙タイムズ、豪紙オーストラリアンの世界的有力紙を傘下に抱える米国のニューズ・コーポレーションと、ニュースの提供を受ける対価として相当額の使用料を支払うことで合意した。詳細は明らかにされていないが、グーグルの支払額は3年間で数千万ドル(数十億円)に上るという。

ニューズ社を率いる「メディア王」のルパート・マードック氏は、かねてから「巨大IT企業がニュース記事を無料で利用して広告収入を稼ぎ、報道機関の広告収入を奪った」と批判してきた。

タフな交渉の末、多額のニュース使用料の獲得にこぎつけたニューズ社のロバート・トムソン最高経営責任者(CEO)は「世界中のジャーナリズムにプラスの影響を与えるだろう」と強調、「高品質のジャーナリズムには、ふさわしい使用料を支払う。それをグーグルが理解した」と胸を張った。

「ニュース・ショーケース」に「3年間で10億ドル」

グーグルが記事使用料を支払う新しいサービスは「ニュース・ショーケース」と名づけられ、2020年10月にスタートした。

従来の「グーグルニュース」はグーグルがアルゴリズムに基づいてニュースの表示順を決めるのに対し、「ニュース・ショーケース」は契約した報道機関が自らニュースを選んで掲載する点が決定的に異なる。各社の判断で有料記事を表示すれば、無料で閲覧できるようになる。