さらに、検索事業がメインのグーグルにとって、信頼できるニュースの確保は最重要課題だ。フェイクニュースが跋扈ばっこする中、検索結果がフェイクであふれれば、たちまち信用を失い、稼ぎ頭のネット広告に重大な影響が出かねない。報道機関と対立するより信頼関係を築いた方が得策と判断したのは当然だろう。この点は、利用者のコミュニケーションがメインで、ニュースを事業の中心とはしていないフェイクニュースとは異なる。

いくばくかの経済的負担をしても、得られるものはそれ以上なのだ。

「この3年で700万部減」日本の新聞社は息を吹き返せるのか

日本の事情はどうか。

グーグルは20年12月、遅まきながら日本の報道各社とも記事使用料をめぐる交渉に入り、2月半ばには主要紙数社と合意に達したと発表した。支払額もスタート時期も明かさず実相は霧の中だが、先行する海外の事例を見る限り、傾きつつある新聞社の経営を立て直すほどの金額になるとは想定しにくい。

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一方、フェイスブックの日本への展開はこれからだ。

日本の新聞社の衰退は欧米に比べてスローペースで推移してきたが、ここにきて急速に落ち込み始めた。

日本新聞協会によると、新聞社のパワーの源泉となる発行部数の総合計は、20年10月時点で3509万部。ピークだった1997年の5376万部から1867万部余りも減少、3分の2まで落ち込んだ。

前年との比較では、17年2.7%減、18年5.3%、19年5.3%減、20年7.2%減と、年々減少率が大きくなっており、下げ止まる気配はなく、直近3年間では700万部余りも減っている。

銘柄別にみると、2021年1月の公称部数は、読売新聞731万部(前年同月比57万部減)、朝日新聞481万部(同43万部減)、毎日新聞202万部(同27万部減)、産経新聞122万部(同12万部減)日経新聞194万部(同28万部減)。

わずか3年間で、業界トップの読売新聞の部数がそっくり消えた勘定になる。だが、欧米各国と違って、日本政府が新聞社の救済に動く気配はない。

大盤振る舞いのように見えるが手放しでは喜べない

もっとも、「ニュース・ショーケース」の世界的広がりを、単純に喜んでばかりはいられない。

「3年間で総額10億ドル」というと、一見、大盤振る舞いのように見えるが、内実を精査すると必ずしもそうではない実態が浮かび上がってくる。

分配の対象が500社ともなると、単純計算すれば1社あたりの年間受取額は67万ドル(約7300万円)にすぎない。支払額は、新聞社の発行部数やネットの閲覧数に応じて決定するため、小規模な新聞社が受け取る額は数万ドル(数百万円)にしかならないケースも想定される。参加する報道機関が増えれば、配分金がもっと少なくなるのは言わずもがなだ。