昔の自分にはあえてアドバイスしたくない

——コミュニティを出てからのこの10年は、とても大変だったと思います。どんな困難がありましたか。

とても、とても苦労しました。それは疑いのないことです。変化するには平均的に10年くらいかかると思っていましたが、変化は本当に、本当に大変で、内面的にも外面的にも多くの資源、多くの戦略、多くの幸運が必要です。本当に多くの幸運が。

コミュニティを去ることを考えている人々にアドバイスを求められたら、彼らと話すことは非常に怖いです。本当のことを言うのが怖い。というのも、もし誰かに「10年かかる」と言われていたら、私はコミュニティを出なかったと思うからです。人々を怖気づかせてしまいそうで。

「昔に戻れたならば、自分にどのようなアドバイスをしますか」と尋ねられれば、「ノー・アドバイス。何も言いません」と答えています。なぜなら「彼女」が諦めてしまうのが怖いから。この困難はとても複雑で、端的に答えるのは難しいものです。

最初の段階の困難は、もちろん現実的なこと。貧乏で、教育もなく、コネクションもなく、支援もない。第二の側面は、社会的(social)な面です。社会的なルールが理解できません。外の世界で、どうしたら人々とコミュニケーションをとれるのか、どうしたら友だちが作れるのかわかりません。

脱出後に自殺を図る女性はたくさんいる

また別の段階においては、超正統派のコミュニティが常に足を引っ張ります。手紙を書いてくるんですよ。「絶対に成功できない。あなたは外の世界に属することなんてできないし、絶対に幸せにならない。死んじまえ」と。この程度はマシなほうです。彼らがそんなことをするのは、私たちの失敗に力を注げば、コミュニティに疑いを持つ子どもたちに示すことができるからです。「出て行ったら、こういうことが起こるんだよ」ということを。

重なった封筒と手紙
写真=iStock.com/malerapaso
※写真はイメージです

彼らは多くの出ていった人たちを自殺させようと説得します。それは機能し、多くの人が自殺しています。超正統派のコミュニティを出た人間の間には、自殺が蔓延しています。自殺を試みた男性より、自殺を試みた女性を多く知っていますが、これはまた大きな問題だとも言えます。なぜならば、出て行こうとする時の年齢が、最も被害者になりやすい世代だからです。現実的にも、感情的にも、社会的にも。

コミュニティはその「傷つきやすい世代である」ことを利用します。「ほら、私たちが警告したことは本当でしょ。それは決して変わらない。だからもう諦めなさい」と。

確かに私は、子供がいたこともあり、とても長い間、耐えて頑張りました。母親であるというのは、とてもユニークな状況です。というのも、自分以外のものに気持ちを集中出来るから。おそらくこのことが、幸運やめぐり合わせを引き寄せた、一番大きな源だったと思います。