コロナ禍でリモートワークの父親が自宅にいる時間が増えた。中学受験関連の著作も多い作家の鳥居りんこ氏は、「中学受験をするわが子の勉強や生活態度に口をはさみ、子供部屋で仕事をして、もっと勉強せよと圧をかける過干渉な父親が急増中です。点数・偏差値至上主義に陥り、かえって子供の伸びしろを潰してしまうこともある」と警鐘を鳴らす――。
在宅勤務
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リモートワークの父親が急にわが子の中学受験に口出しを開始

新型コロナウイルス禍で行われた2021年中学入試。首都圏(群馬県を除く1都5県)での受験者数は推定約6万4000人(エデュケーショナルネットワーク調べ)で前年の約6万3000人を上回った。首都圏の小6生の5人に1人が受験した計算だ。

このコロナ禍での中学受験は「自宅リモート学習元年」となったわけだが、保護者も塾も手探り状態の大変な1年だった。その影響か、保護者から中学受験関連の相談を受ける私の元に寄せられた家庭内トラブルの相談件数も例年以上に増えた。

ポイントは、その相談内容だ。目立ったのは、父親が引き起こした「在宅問題」。今まで中学受験にほぼ無関心だった父親がリモートワークになった途端、わが子の勉強や生活態度などに口を挟んできたために、母子に煙たがれたケースである。

子供の横に張り付いて「勉強を手取り足取り」が逆効果

大手中学受験塾のベテラン室長もこう述べる。

「(子に接することが多い)母親が中学受験する子供に過干渉となるのはある意味、仕方ない面もありますが、今年度はコロナでリモートワークになった影響もあって“過干渉の父親”が増加した印象を持っています。リモート勤務で時間があるせいか、塾に基本的な質問をしてくる父親が増えたんです。Zoomでの保護者会ですでに説明した基本的事項であっても『自分自身が確認したい』とダメ押しのように聞いてくる父親が多かったですね」

張り切って塾に電話をしまくる父親の例は、他の塾の先生たちからも聞いている。ベテラン室長は続ける。

「近頃は、子供にベタベタするというか距離感が近すぎる父親が増えています。わが子の力を信じようともせず、横に張り付いて手取り足取り。自分の思いどおりに動かそうとしているようにも見えます。これは能動的に動く力を子どもから奪い取る行為になりかねません。また、父親自身もかつて(高校・大学受験など)受験を頑張ってきて勉強はコツコツやるしかないと知っているはずなのに、わが子になったら、『効率的な学習方法を教えて』と。あるわけないことくらい、ご自分が一番、分っているはずなのですが……」